学園一の美少女に「助けて」と言われたので、全力で応えたいと思います。
@Akhn496
第1話 美少女に助けを求められる
カスカスになった声で
「あ゛ー、久々にここまで歌ったな」
俺こと"花咲 響"は、友人の"三枝 恭弥"と共にサシでカラオケに来ていた。
「それな。てか、響さんよぉー。また、音域広がったか?」
「hihiCまでは出せるようにはなったんよ。ドヤァ」
「なんかうぜー」
なんて、馬鹿話をしながら会計を終わらせバス停まで一緒に歩く。
「じゃあ、俺はバスだから。また明日な、響」
「はいよ、ばいばーい」
俺達はバス停で分かれ帰路に着く。暫く家に向かって歩いていると、家の近くの閑散とした公園を横切るとベンチに腰掛けてる同じ制服を着た人がいる。
「珍しいもんやのぉ」
なんて、独りごちつつよく見ると...
我が学園の天使様こと"西園 朱音"ではないか!
ん?でも、確か西園さんと学校前のバス停まで話しながら歩いた時はバス通で家もこことは正反対の位置にあるって言ってたよな...
んー?気になるし話しかけてみるか。
「おーい!西園さん!何してんのー?」
俺の声に反応して顔を上げた西園さんを見て驚いた。
だって、泣いてるんだぜ?いつも眩いまでの笑顔を浮かべてる西園さんが
「はぁ!?西園さん!大丈夫か!?...ゲホッ」
「花咲君?」
西園さんのところにダッシュで行く。
「ホントに何があったんだ?大丈夫か?」
そう俺が矢継ぎ早に質問すると
「ふふっ。花咲君、声カスカスですよ」
思わずといった様子で少し笑い、そんなことを言ってくる。
「いや、さっきまでカラオケに行っててさ...じゃなくて!ゲホッ...すまん、少し水飲む」
カバンから水筒を取り出し水を飲んで、改めて気になっていることを聞く。
「なんで泣いていたんだ。」
西園さんは目を逸らし俯く。暫くして小さな声で喋りだす。
「私、失恋しちゃったの」
そう言って、ぎこちなく笑う。
隣のベンチに座りながら問いかける。
「樹か?」
デリカシーが無いのは分かっているが聞かずにはいられなかった。
「うん」
西園さんは小さく頷く。
「ごめん」
今度は首を横に振る。
「気にしないで」
俺に今出来ることは、こちらから踏み込まないことと、
「話して少しでも楽になるなら、付き合うよ」
聞き手になり、感情のはけ口になる事ぐらいだ。
少しの間、沈黙が流れる。
「私ね。神里君が好きだったの」
西園さんが話し出す。頷きはするが声は出さない。
「でも、神里君ってモテるじゃん?だから、頑張ってアピールとかしたんだけどね。ダメだったの」
「そうか」
今度は、頷きつつ声も出す。
「うん。でね、何が足りなかったんだろう?何がいけなかったんだろう?ってずっと考えてたんだ。そうしたらさ、神里君のこと知ってることよりも知らないことの方が多かったんだ。」
泣くのを堪えているのか、声が震えてる。
「少し、お手洗いと飲み物買ってくる。」
そう言って、席を離れる。少し大きめに足音を鳴らしつつトイレへと向かう。何か聞こえた気がするが気のせいだろう。
いつもより長めのトイレを済まし、温かいココアを買ってから戻る。
「ただいま」
「おかえり。ごめんね。気を遣わせちゃって」
「なんの事だ?カラオケで飲みすぎてお腹壊しただけだぞ?それより、ずっと、この寒いなかいたのかは知らんが体は冷えてるだろ?」
そう言って、買ったばかりのココアを手渡す。すると、驚いた表情でこちらを見る。
「ほれ」
「受け取れないよ!花咲君が自分で飲んで!」
「甘いの苦手だったか?前に甘いのが好きって教室で話してるの聞いてココアにしたんだが」
「確かに好きだけど!付き合ってもらってるだけで申し訳ないのに」
「好きなんだな?じゃあ飲んでくれ。俺さぁ、基本水以外飲まないようにしてるし、何より甘いの苦手なんだよね」
そこまで言うと、どこか恨みがまそうにこちらを見ながらココアを受け取る。
「それはずるいと思う」
「どこが?」
ちょっとこちらを睨んでくる。...少しは落ち着き始めてきたか。
「だって、暗にお前が飲まないと無駄になるって言ってるようなもんじゃん」
「いや、無駄にはしないわ。ただ、苦手な甘いのを飲まされて、約3年ぶりに水以外を飲むことになるだけだね」
そう言って肩をすくめる。
「甘い物が苦手はまだ分かるけど、水以外飲んでいないってどういうこと?分かりやす過ぎない?」
水以外飲んでいないのを嘘だと思っているらしい。
「いや、ガチだよ」
「絶対うそ!」
「明日学校行ったら恭弥辺りにも聞いてみ。あいつは、このこと知ってるから」
俺がそう言うと目を逸らす。あー、学校に行きづらいって思ってる感じか。
「まぁ、別にたまにならサボってもいいんじゃね?」
こちらを見て少し驚いてる。
「俺だって月2のペース位でサボってるし」
ことも無げに言うと、指をさしてきて煽られる。
「花咲君って、不良だったんだー!」
「どこがだよ。制服だって、こんなピシッと来ているやつ俺だけだよ」
そう反論すると、眉根を寄せてムムッとうなり始める。どこか指摘できる場所を探しているのだろう。
「あっ!でも、ブレザーのボタンひとつしか閉めてないよ!」
顔に喜色を浮かべて、そう言ってくる。しかし、残念。それはワザとなのである。
「西園さぁん、これはね。飾りボタンっていってワザと閉めないでいるんだよ?」
ニヤニヤしながら煽ってやると、スマホを取りだして調べ始めて顔を赤くしてる。
「あれ?西園ちゃん?どうちたのかな?んー?」
もちろん。死体蹴りも忘れない。
「馬鹿ッ!」
その言葉でまた沈黙が流れる。先程の重苦しさはかなり軽減されてる。
「ねぇ、花咲君」
「どうした?」
西園さんの方から話かけてくる。
「明日、どっか遊びに行かない?」
俺としてはいいよって言ってもいいが、そうなると西園さんに良くない。なので、
「だが、断る!」
「なんで!?今のいいよって言うところじゃん!それにたまにサボってるなら、明日サボっても変わらないでしょ!?」
まぁ、そんな反応にもなるわな。
「あんなぁ、明日遊びに行くのは構わんけどさ。そうしたら、俺を樹の代わりにしてしまうんじゃないか?樹の優しさを俺に求めるんじゃないか?」
目を逸らす西園さん
「そんなことない」
否定してくるが、無意識でそうしているのかは知らないが目をそらす時点でアウトなんだよ。
「いや、あるね」
そう断言する。そして、さらに問いかける。
「西園さんは、このまま俺が優しく接し続けたら、甘やかし続けたら、俺のことを好きにならないと断言できるのか?」
今度は返事が返ってこない。
「そういうことだ」
西園さんの方から消え入りそうな声で質問がくる。
「じゃあ、なんで今は優しくしてるの?」
「俺だって、失恋してすぐの人に厳しくするほど鬼じゃない。だけど、今日家に帰って明日になったら、俺はもう優しくするつもりはない。もちろん、困ってたら助けたりもするが、失恋の傷にあえて寄り添いに行くつもりはない。」
淡々と答える。
「じゃあ、帰らない」
「はぁ?」
「私が帰らなかったら、花咲君も帰らないでしょ?」
既に依存し始めてるか。少し不味いな。一芝居打つか。
「なら、もう帰らせてもらう」
「ダメ!」
帰ろうとカバンを持ち席を立つと、聞いたことのない大声で引き止めてくる。
「行かないで...」
「助けてよぉ...」
泣きながら、俺の制服を掴みそう言ってくる。
...そんなこと言うなよ。帰れなくなるだろッ!
「西園 朱音!」
名前を呼ぶ。西園さんがこちらを見る。
「お前は、俺に樹を重ねているだけだ。ここで、お前が俺に樹を重ねたまま行為を抱くと、お前が不幸になるだけだ。」
諭すように話しかける。
「俺が何かをする度、樹ならこうするって思い。失望し、その行動を強要してくるようになる可能性が高い。」
「そんなこと、する訳ない!私は今、私に優しくしてくれた花咲君のことが」
「それ以上口にするなッッ!!」
今、一番言ってはいけないことを言おうとした。喉が痛いのも構わず西園さんに怒鳴る。
「お前は、今まともな思考ができていない!ただその場の雰囲気に流されてるだけだ!それに!お前の想いは、俺に少し優しくされた程度で崩れ去る生温いものだったのか!だとしたら、俺はお前を心底軽蔑する!俺を、樹の代用品として扱うな!お前の言動は、俺にも!お前の好きな人の樹にも失礼なんだぞ!それを理解しているのか!!」
俺も自分でまともに喋れたのか自信が無い。だけど、自分のやろうとしていたことの愚かさは気付けたっぽい。
ただでさえ、喉にダメージがあるのに大声を出して乾燥した空気を吸うとかなりキツイな。
「もう、今日は帰るんだ。1日頭を冷やした後に俺に話したいことがあるなら、また話をしよう」
なるべく穏やかな声で言う。
「親御さんに連絡して迎えに来てもらえ」
「うん。ごめんなさい」
頷き、謝ってくるが俺はそれには反応しないで一方的に言葉を紡ぐ。
「親御さんが来るまでは俺もここに居とく、流石にこの状況で1人にすることは出来んからな」
「ありがとう」
それから暫く時間が経ち西園さんの母が迎えに来た。西園さんの母には、俺の方から事情を説明して解散ということになった。
こんな衝撃的な出会いが俺と"朱音"の未来を変えることになるとは全く思いもしなかった。
学園一の美少女に「助けて」と言われたので、全力で応えたいと思います。 @Akhn496
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