第17話「屋根裏の害獣」
雷が落ちた翌日、顧客から電話があった。
「夜中に屋根裏から妙な音がする」とのこと。
まぁ、よくある話だ。たいていの場合、ハクビシンとかアライグマだろう。俺の仕事は、そういう『普通の』トラブルにも対応することだから、とりあえず現地に向かうことにした。
物件に着くと、すぐに梯子を用意して天井裏へ。顧客は何かがいるたびにビクビクしていたが、俺は慣れている。少し面倒そうに見えるが、簡単な害獣駆除ならすぐに終わるだろう。
軍手で天井を少し押し上げると、薄暗い屋根裏に何かが動く気配を感じた。懐中電灯を向けると、見慣れた動物――ハクビシンだ。やっぱりか。そう思いながらも、その動物が金色の目でこちらをじっと見ているのが気になった。
「ん?」
違和感が走った。尻尾が……二本? さすがに目の錯覚かと思ってもう一度見直したが、間違いない。そいつは明らかに尻尾が二本あった。
そして、次の瞬間。そいつが鋭い鳴き声を上げ、こちらに向かって威嚇してきた。今まで見た害獣とは明らかに違う、まるで雷の音を真似したかのような不気味な声だ。
不意に、そいつの爪が目に入った。鋭くて、まるで小型の刃物のように光っている。これには少しだけ驚いた。臆病な性格のハクビシンならここで逃げるはずなのに、こいつは逆に威嚇してくる。
そう思った瞬間、そいつは突如、激しい閃光を放ち、電光石火で突進してくる!
――――親指の付け根に熱が走る。
反射的に閉じてしまった目を開けると、嘘みたいに静まり返った天井裏が広がっている。だが、切り裂かれた軍手と血のにじむ親指の付け根が、嘘じゃないと主張していた。
「大丈夫、もう逃げたようです。また入り込まれないように、業者に天井の隙間をふさいでもらいましょう」
俺は怪我を隠して、『普通の』仕事の様に顧客に告げた。
事務所に戻り、社長に報告した。
「天井裏にハクビシンみたいなのがいたんですけど、尻尾が二本で、爪も鋭い。で、威嚇された後に、光って消えました」
社長は少し驚いた顔を見せたが、すぐにニヤリと笑った。
「それ、雷獣かもしれんぞ。まさかUMAを発見するとは、お前もやるじゃないか」
雷獣……そんなものがいるのか? 社長はすっかり喜んでいたが、俺にとってはただの変わった害獣にすぎない。
「これって労災おりますかね?」
俺はこれ見よがしに絆創膏を貼った手をひらひらさせた。
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