二日目④

「なに」

 僕はホテルの部屋に荷物を下ろした。

「夜ごはんどこにしましょうか?」

「歩いて気になるところをみつけたら入るスタイルだと楽しいですよ」

「えースマホで調べよっと」

 僕はそれを止めた。

「絶対、その場でいいと思ったところに入って、レビュー気にせず食べるほうが楽しいですよ」

「そうなの?」

「はい」


 僕は明るく答えた。彼女は、それを聞くと、顔をぷくっとさせて、


「せっかくだからおいしいところで食べたい」


 と言い張っている。


「まあ、とりあえず、外、出ましょう」


 二人で外をぶらぶらと歩いていた。古本屋から白い石で舗装された街路の左手に蕎麦屋が見えてきた。そこは白のコンクリートでできた蕎麦屋だ。


「ここにしますか」


 僕たちはその蕎麦屋に入った。


「いらっしゃい」


 と迎えられた。僕と彼女でメニュー表を睨んでいると、緑茶が来た。

 僕は天ぷら蕎麦を、彼女はざる蕎麦を頼んだ。


 二人でいるのに静かな時間になっていた。スマホをいじるわけでもない、ただ、二人で手をつないでいるだけだった。それは目に見える形ではない。隠れて手を繋いでいる。寒い季節に、僕と彼女の体温は心地よかった。

 

 「へいおまち」


 僕の天ぷら蕎麦が先に来た。続けて、彼女のざる蕎麦も来た。


「いただきます」

「いただきます」


 蕎麦を二人とも食べた。単純な感想だが、美味しかった。天ぷらはうまくダシとあった。


「ごちそうさまでした」

「ごちそうさま」

「僕が払いますね」

 僕がそうやって、お金を会計の人にお金を出すと、

「いや、自分の分くらいちゃんと払うわ」


 お互い別払いになった。

 僕と彼女でお金をそれぞれ払って出た。


 「おいしかった」


 僕はうれしかった。

 二人で手を繋いでいた。僕はそれだけでは満足いかなかったので、


「え、紫君!」


 彼女がびっくりするようなハグをした。


「ホテルで続きしよっか」


 僕がそう彼女にささやいたとき、彼女が頬を赤く染めて、恥ずかしそうだ。

「わかった」

 彼女がそうつぶやいたとき、僕のボルテージがあがって、気づけば、彼女をお姫様抱っこして、ホテルに帰っていた。

 エレベーターに入った途端、僕は、彼女を襲っていた。

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