二日目②
大船行きの電車に乗る。大船で電車を乗り換えて北鎌倉を通って鎌倉へ行く。そういうルートだ。
「乗ろうか」
「うん」
僕らは電車に入った。電車の椅子に奥から二人で座った。
すると、なんと、彼女、電車でも僕からつかんで離れない。村上春樹ならきっとやれやれと言いながら受け入れているはずである。やれやれ。電車でもいちゃいちゃするんですね。
最高かよ。
彼女の胸が僕の腕を包む。なんと最高なんだろうか。楽園ですかここ。だが、僕はやれやれとしていた。文学青年の齟齬は感情をうまく出せないことだ。
僕は、電車のなかで思った。彼女が急にいちゃいちゃし始めたのはこの男は私のものだから私に近づくなというマウントであると。
少し彼女をエロく見ようとする視線があると、彼女、某警備会社のCMに出演した某人類最強のレスリング選手のごとく、目から恐ろしいビームを出して変態中年男性を撃退。
お互いのキスマークが首筋に二人とも付いていて、それがどうも、二人をみる人の視線があまり良くはなかったが、彼女は気にも留めず堂々としていた。
「17歳、女子高校生、何が悪い」
そう、堂々としていた。
「新宿」
新宿は俺はあまり好きな街ではない。臭いし。
ただ、面白い本屋があるのだ。全国からマニアックな偏った面白い本が置いてあるヤバ目な本屋があるのだ。
ほかにも安く本が売ってある。やっている店主が批評家の人の古本屋もある。かなり安くレベルの高い本を売ってくれる。ここで本についていろんなことを学んだといっても過言ではない。
「新宿」
新宿を過ぎて、神奈川まで来た。
すると、昼の授業をまとめた有能友人、祐二から某メッセンジャーアプリ、ライムでノートが送られてきた。
「う、わからない」
僕は苦しんだ。難しすぎる。それは数学の授業であった。数学は苦手なのである。
「どうしたの?」
「こ、これ」
「うん、これがどしたの?」
「難しくて」
「え? マジで紫君」
「はい。6日も学校サボれないかもしれませんね」
「そっか」
彼女は、神奈川の空を見上げて寂しそうに呟いた。
「明日は学校行かなきゃね」
そうニコッとする彼女を見て、悲しい気持ちになった。
僕はずっと彼女といたかったのに。僕のせいで彼女とはずっといられなくなってしまったのだ。どうしてだろう。時間は残されていないというのに。
僕らはそれから「北鎌倉」につき、それを過ぎ、次は「鎌倉」へと着いたのである。
「鎌倉」
僕たちは、鎌倉で降りた。
鎌倉に降りると、まず、僕たちは観光協会へと向かった。
「観光に来たのかな?」
そう観光協会の人がいうと、僕らは頷いた。すると、地図を出してくれた。
「ありがとうございました」
二人でお礼をいうと、観光協会の人はニコニコとほほ笑んでいた。少し、小雨が降っていたので、駅から武士が崇める鶴岡八幡神社の方向にあるビルに入った。そこに入っている100円ショップへと向かうために。
「ここでどうするの?」
「傘でも売っているかなって」
100円ショップで僕らは傘を買った。レジで支払いを終えた。
「使い捨て傘だけど」
「へえ。100円ショップって傘売っているんだね」
僕らはそこから傘をさして鶴岡八幡神社にお参りに行った。
「ご利益あるといいね」
「うん」
僕は、おみくじで運試しをした。
「吉」
恋愛には「恋は報われませんが良い経験になります」と書いてあった。
「みせて」
「見せません」
僕は見せなかった。
「せ、浅香は結果なんだった?」
「大吉」
「良かったですね」
僕らは神社にお参りをしたあと、今度は逆方向に向かった。駅近くにある踏切を越えたところには古本屋があった。そこに入ると店主は快く迎えてくれた。僕はボードレール詩集を買った。鎌倉でボードレールってかっこいいかなって。ハハハ。
ん? 由比ガ浜、雪ノ下、葉山。なんだこの地名は。どこかでみたことある。
「街並みが美しいですね。文化を感じます」
「そ、そうね」
ぶらぶらと歩いていると、かなりお金がかかって作られた小学校があった。僕はすかさず、ウィキペディアで検索をかけた。そこは某有名解剖学者の出身校であった。
「こ、こうりつ」
二人で叫んだ。
「ここ、公立小学校なのね」
「マジで公立ですね」
鎌倉市、金がある。えーとウィキペディアでみていると、この看板、なに、俳人、高浜虚子が書いたのか! なんだこの豪華な小学校。
あとがき
鎌倉へ来た二人。逃避行もどこまで出来るかはわからない。
恋愛っていつかは別れが来るものです。なので、恋愛するときは今日、突然世界が終わると思って、今のうちにいちゃいちゃしたり、楽しんだりしてほしいなあって思っています。今を楽しもうぜ。
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