第9話影法師3



眠っているのに起こされる。

顔をベロベロと舐めて起こしたのは、二郎だった。

影から身を乗り上げてパジャマを口で引張る。


ああ、ダンジョンに何かあったんだ。

すばやく着替えて影に入った。


皆は宝箱を取囲んで待っている。


俺を見て「ワン、ワン、ワン、ワン・・・」と吠える。


宝箱に対して、どうしたらいいか迷っていたに違いない。


普通の宝箱なら開けているのに・・・

この宝箱には、異様な雰囲気が・・・


周りを見回すと・・・そこは部屋だ。

あ!あのドアに見覚えがある。


隠し部屋と似ている。

外に飛びだすと通路で、間違いなく隠し部屋だ。


「隠しドアを開けたカラクリは何だ!」


「ブヒー」


「ワン」


「ワン」


「ワン」


「ああ、もう言わなくていい」


意味がなんとなく分かる時と分からない時があるが、これは分からない時だ。

これは、あけらめるしかない。



あの時の出来事で黒魔法が優良な魔法になった。

俺にとっては、人生の転機だ。

それにタイムスリップしても俺は、ダンジョンに入った記録ない。

普通に行方不明者になるだけだ。


あ、1人旅していたと言い訳もできる。


だから思い切って決心する。


宝箱を開けた。


なんと靴が入っていた。

靴の横には、翼が生えている。


これって履くと空へ飛べる靴かも・・・



あの時も爪のメリケンサックをつけた時に転移したハズだ。

これも同じだろう。


靴を履き紐をギュッと絞めた。



青白い魔方陣が光っり、その瞬間に転移した。





そこも広い空間だった。



『1時間内にサラマンダー10頭を殺しなさい』


なんとBランクのモンスターだぞ。

Bランクのダンジョンのボスモンスターでまだ倒されたって記録もない。


そんなモンスターと戦うのか・・・


60分が表示されたぞ。


急いで影拘束を発動。


なんとか7頭を拘束に成功。


飛べと願う。

なんと浮いたぞ・・・5メートルもあるサラマンダーが飛びついて来た。

間一髪で逃れることに成功。


「コボルト達と黒影は逃げろ!決して戦うな」


理解したように逃げる。


やっぱ俺しか狙ってこない。

コボルトが戦ったら瞬殺だ。



空を飛んで皆が居ないスミへ誘導。

やっぱり追っかけて来たぞ。


サラマンダーの体の炎の熱が上昇して、めちゃ熱いぞ。



強力懐中電灯で手に照らして天井に影を作る。

サラマンダーの真下に調整して水が出るよう願う。


この水は『奥山ダンジョン』の川が綺麗なので、影にどれだけ入るか試した川の水だ。

なんでも試していて良かったぜ。



3頭は、口を大きく開き火球を放つ寸前だ。

火球に当たると大爆発して炎に包まれて死ぬ運命だ。


「ザバッ」水が下へ落下したぞ。


口から火球が出るが水が接触して水蒸気爆発が起きた。

サラマンダーの頭は粉々になる。


3頭の体も原形をとどめないように崩れる。


俺も天井に吹き飛ばされる。

靴に耐えろと願う。


「ドン」と当たるが強い衝撃でない。


それに体が熱い。

影から水をぶっ掛ける。


服装はベショベショになったが火傷もない。


「助かった」


残り時間54分。


残り7頭のサラマンダー上空で見守る。


必死にもがくサラマンダーの目には、徐々にあきらめの目へ・・・


残り51分。


残すは頭のも・・・あ、影の中に消えた。


影法師の素材が表示されたぞ。


影法師を作るに決まってる。


影から赤黒いサラマンダーが這い出してくる。

赤いのは、炎が体から燃え出している証拠だ。


まさに地獄から這い出したモンスターだ。


『条件をクリアしました。第5位階魔法を取得しました』


え!なんで・・・もしかしてサラマンダーを倒したから・・・

第5位階魔法で分かったことは・・・


影から硬い棘のような物で突き刺せることだった。

相手の影から突き刺せるので、100発100中だよ。

外すハズがない。




あれ!あの部屋に戻った。


「おい!お前ら狭いから部屋から早く出ろ・・・」


ああ、圧死するかと思ったぞ。


スマホを取り出して見る。

時間と日付は当てに出来ない。



「俺、帰るから・・・後は頑張ってくれ」


「ガウ」


「ガウ」


「ガウ」


「ガウ」


「もう言わなくていい。名前は考えておくから待ってろ」


納得したようだ。


俺は影に入る。


人気のないトンネルだ。

幽霊スポットで夜に来た者は、必ず死ぬって・・・

今の俺は、怖いもの知らずだ。



トンネルを抜けてスマホで電波を・・・

なんとタイムスリップは、してなかった。


失敗しないでクリアしたからかも、ならば影に入って部屋へ帰った。


2:25分。

それが現在の時間だ。


部屋の時計も同じだ。


ノートパソコンを開いて電源を入れる。


間違いなく正常な日時だった。


安心しながら冒険者ホームページを見る。


なんと韓国ギルドが船を買って韓国へモンスター討伐に行くらしい。

それに対して日本政府の支援を求めたみたいだ。


日本政府は、時期早々とやんわりと断った。

仕方なく勇気ある日本人冒険者を募っていた。


場所は、佐賀県の唐津フェリーターミナル。

廃船寸前のフェリーを買って行くらしい。


総トン数:984トン

旅客定数:350名

車両積載台数:約46台


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