第8話影法師2



あの黒くなる現象は、10日間も影に入れ続けることが条件だったよ。


毎日ダンジョンへ行って戦ってるから、ドロップした剣も数日は普通の剣だ。

それが10日を境に段々黒くなってゆく剣。

13日には、真っ黒な剣になってる。

マジに不思議な現象だ。


あのお茶も自動車学校の合宿で、全て飲み切ったから黒くなるかどうか分からん。


もし黒いお茶を飲んだら強くなる可能性もあるかも。

嫌、黒いお茶なんか・・・飲めねーよ。

あ!黒いコーヒーと思って飲むのもありか・・・


自分で自分を実験するなんて、やっぱ嫌だわ。





「ブヒーブヒー」


「なんだ・・・助けてくれってか・・・」


100万円以上の魔石の買取をしてEランク冒険者に昇格を果たした。


ここは山奥の『奥山ダンジョン』でEランクのコボルトを相手に戦ってる最中だ。

身長160センチの犬の顔して、2本の足で立っていた。

それに皮の鎧を着ている。



そのコボルトが弓を持って矢を放っている。


10本の矢が黒影に当たって、跳ね返されている。

それも執拗しつように顔を狙っていた。


黒剣の一振りで8本の矢を振り払う。

2本が目に向かっている。


俺のブラックショットで経験済みだ。

目をつぶってまぶたで矢を防いだ。


「ブヒー」と叫ぶ。


それでも痛いらしい。


仕方ない・・・影拘束を発動して弓隊を拘束。

今では、10人のコボルトも簡単に拘束できる。


黒影は、前衛の盾隊を「バシュン、バシュン」と叩く。

盾のスキ間から槍が襲うが、槍も一緒に叩く。


邪魔な弓隊が居ないから、思い切り叩けるみたいだ。


3本と槍が壊れる。

ヒートアップした黒影は、盾を真っ二つに斬った。

3枚の盾で防衛した中央が、がら空きになる。


追い討ちに2枚の盾も斬って腕も斬ってる。


もう防衛ラインはズタズタになって、斬り殺されるコボルト。


コボルトが蹴られて壁に激突して「グシャ」と潰れる。

ああ、手足が変な方向に・・・

盾を失った屈強なコボルトが頭を左手で捕まる。


右手の黒剣が振られて、槍持ちも近づくことが出来ない。


「メキ、メキ、ブシャ」と握り潰される。


そうとう痛そうな殺し方だ。


黒影が前衛を全て殺し去った頃には、全ての弓隊を影に引き込んでいる。


影法師の素材が出来た瞬間だ。

迷わず影法師にする。


影から這い出すコボルト。

揃いも揃った弓と矢筒を装備したコボルトたち。


あれ!弓と矢も真っ黒だぞ。


「その弓を貸してみろ」


手に取って引くが、ちょっとしか引けない。

マジか・・・


矢も見てみる。

なんと強度も黒剣と同じだぞ。


影法師になったから・・・弓も矢も黒くなったのだろう。

まあ、こっちには有利になったから文句もない。


これで遠距離攻撃が出来て戦いも楽になるだろう。



「ワン」


「ワン」


「ワン」


「ワン」


「分かった。返事はいいから・・・」


「ワン、ワン」


「なんだ・・・名が欲しいって・・・」


ああ、どれもこれも黒い犬の顔なのに見分けることが出来るぞ。


「お前は一郎、お前は二郎、お前は三郎、お前は四郎、お前は五郎、お前は六郎、お前は七郎、お前は八郎、お前は九郎、最後は十郎だ」


名前なんて、めんどくさいぞ。


「ワン」


「なんか気に入ってるのか・・・」


「ワン」


「同じ郎つながりの名前だから、平等で気に入ってるのか・・・」


「ワン」


「ワン」


「もう言わなくていい・・・感謝してることはわかったから・・・」


ここは6階層。

黒影1人の放置は辛いから、いい頃合だ。


「俺は帰るから頑張れ」


「ブヒー」


「ワン」


「ワン」


「ワン」


「ワン」


「ワンワンとうるさい!帰るからな」


俺は、影に沈んだ。


1階出入り口近くで、目をキョロキョロさせて人がいない事を確認して這い出る。



ボックスに魔石を入れてゆく。


だいたい60万以上あるだろう。

数えて計算するのも・・・今では影の中に5千万以上の魔石がある。

魔石は、黒くならなかった。


なったらこっちが大変だ。


檻のドアがスライドして開いた。

そしてドアの外へ・・・「なんだ、おばさん・・・まだ居たの・・・」


「ここは私たちの憩いの場なんだ。よそ者は早く帰りな・・・」


なんと下には、手弁当やお菓子が・・・

おいおい、魔法瓶から湯飲みにお茶を入れてるぞ。


「はい、サちゃんも飲むといいよ。これって健康に良いお茶なんだよ」


「そうなのかい・・・ありがとうね」


隣のばあさんは、「クチャクチャ」とパンを食べてる。


「ダンジョン管理局から警告はなかったのかな・・・」


「ああ、うるさい爺が何度も来たが・・・それが・・・」


あああ、あきらめたに違いない。


『奥山ダンジョン』を出て、人が居ない場所で影に入る。


出た先は、俺の部屋だ。


靴を脱いでレジ袋へ入れて、1階を確認しながら玄関で靴を履いた。

そのまま外に出てバイクを置くスペースに、影からバイクを取り出した。

このバイクも黒いバイクに・・・ちょっとした事故でも傷つかない。


いやービックリだよ。


サッと2階へ足音を忍ばせて部屋に入って鍵を・・・


そして眠った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る