真相・・・
あの後、6人から話を聞いて、事の経緯をまとめてみた。
まず、仲が悪くていつも言い争いをしているアグネスくんとスピルちゃんが、これまたいつも通りに喧嘩したらしい。
喧嘩の原因は、年下の子たちへの修行のやりすぎだそうだ。
どういうことだ?と思って聞いてみれば、アグネスくんはつい最近冒険者になったらしく、12歳になったら受けるとされる神授の日から同年代の子たちEランク冒険者として活動しているらしい。
子どもが12歳になると、急に魔力の扱いがうまくできるようになることから、12歳の誕生日にはそう呼ばれるようになっている
冒険者も、その日があるからこそ12歳からなれる決まりだ。
私とライトも、神授の日を向かえた後にこの街に来て冒険者になった。
先日のアメリーが指導していた子たちもそうだったんじゃないかな?
そんな彼に、冒険者になりたいからと言って修行をつけてほしいといった子がいたらしく、その言葉に嬉しくなって調子に乗ったアグネスくんが、この孤児院の冒険者志望の子全員を鍛え始めたそうだ。
だが、ペーペーの初心者がそんなことをすればどうなるのかなんてわかりきったも同然で、無茶な動きをしたり、体力が追いつかなかったりして怪我をする子が続出した。
さらに、今までみんなで分担していた家事の手伝いを、修行するからと言ってやらなくなったため、みんなのお姉さんであるスピルちゃんはアグネスくんに文句を言う。
売り言葉に買い言葉で喧嘩が勃発。
アグネスくんは、件の修行会をやる前もこういったやらかしをして喧嘩していたらしい。
喧嘩に、アグネスくんの相棒枠であるネオスくんが参戦して、シスターのテレーズさんとヨセフくんが慌てて止めに入って、もう1人のシスターであるベルナさんが騒動を武力で収めて終結する。
いつもはこんな感じで終息していたらしい。
だが今回は、喧嘩が起こった部屋でブリジアちゃんが魔法薬を作っていたのだ。
ブリジアちゃんは生まれつき、物作りの才能があったそうだ。
この場合の物作りの才能は、自分の魔力を使用して魔道具を作る才能、魔法薬やらの作成に関わる才能だ。
12歳になってとある道具屋の女主人に弟子入りした彼女は、宿題として自室で魔法薬の調合をしているらしい。
その場面を年下の女の子数人が見て興味を持ち、見せて欲しいと言ったそうだ。
最初は自室でポーションの作成を見せていたが、見学会参加希望者が増えて、自室では行えなかった。
だから、広い1室でベルナさん監視の元、魔法薬作成見学会を開いたそうな。
何度も開催して、手慣れてきた彼女は、これまでは作成難易度最低の魔法薬を調合していたが、調子にのった彼女が最近師匠に教わり始めて成功したことがあるワンランク上の魔法薬を作ることにした。
不幸だったのがその見学会にやんちゃな獣人、アグネスくんとネオスが逃げ込んできて、スピルちゃんとテレーズさんが追いかけてきた事だ。
普段からその様子を見ていた子供たちは、よくわかってない子たちを連れて壁際に避難。
普段引きこもって調合作業を行っていた彼女はびっくりした。
その際、つい入れる液体の分量を間違えてしまった・・・。
ベルナさんが魔法薬の様子がおかしいと気付き、魔法薬を取り上げて外に投げ捨てようとした。
だけど、間に合わずドカン!!
突然魔法薬を奪われて混乱してベルナさんの足を掴んだブリジアちゃんに、魔法薬を投げようとしたら急に足を掴まれてうっかり魔法薬を落とすベルナさん、喧嘩をしていた3人の獣人少年少女。
彼ら彼女らは爆発に巻き込まれて、子供たちが巻き込まれないようにそっと別室に移動させようとしたテレーズさんは、爆発で飛んできたコップが頭にぶつかって気絶。
それを見て混乱し、泣き出す子供たち。
以上が、事の成り行きである。
・・・
アホかな?
「4人とも、反省してくださいね」
「「「「はい・・・」」」」
今、4人の子供が床に正座させられて説教を食らっている。
正座とは、やらかした者にさせる刑罰のような座り方なのだ!
だって、長時間正座してると足がありえないくらいピリピリするし・・・。
「まずアグネスとネオス!」
「「は、はい!」」
「この前、クリスタちゃんから言われていたわよね。初心者が人に教えるのは危ないって。教える側も技術がいるし、何より、あなたたちはまだ外のモンスターと戦ったことないでしょう?それなのに何を教えるっていうの?」
「そ、それは・・・教官から教えられてたことを」
「アグネスと同じです・・・」
「それとスピルも、止めに入るのはいいけど、あなたはすぐ頭に血が上って武力行使する癖をどうにかしなさい。それと、喧嘩する場所は選びなさい」
「ごめんなさい、先生・・・」
「ぷっ、怒られてやっイテッ!?」
「アグネスぅ・・・」
アグネスくんが小声でムカつくこと言おうとしたら、しっかりと聞いていたベルナさんによる拳骨が落とされる。
ゴツンッ!といい音がなった。
「そして、ブリジア!」
「は、はい」
「あなたは当分魔法薬の作成を禁止します。爆発の危険があるものを他の子がいる所、そして孤児院でやるんじゃありません!」
「そ、そんなぁ~」
いや、妥当だろ。
というか、ブリジアちゃんが魔法薬の調合の配分をペラペラしゃべってたけど、その配分、どこかで聞いたことがあるような?
・・・暇があったら道具屋に向かうか。
「もちろん、止められなかったあなたたちも反省しなさい。シスターテレーズ、シスターベルナ」
「え、私たちもですか!?」
「申し訳ありません、マルタ院長・・・」
なんか、まだ説教が続きそう。
そんな予感がした時、クリスタも同様のことを考えたのか私の手を掴み、語りかける。
「ルナさん、しばらくは終わらなそうなので私たちは他の子たちのところへ行きましょう。ヨセフくんだけに任せるのは心苦しいですから」
「わかったよ、行こっか」
私たちは、怒られてる6人を放置して子供たちの元へと向かった。
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≪アホらしい・・・≫
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