クリスタの休日

「まさか、ルナさんが手伝ってくれるとは思いませんでした」

「そりゃあ、仲間が重い荷物を1人で運んでいる姿を見たら手伝うに決まってるよ」


 ライトと女性陣(私除く)のローテーションデート3日目。

 今日はネイレスの番なので、アメリーとクリスタはフリーの日だ。

 クリスタは知らないが、アメリーは後輩女子相手にアーツ教室でも開いてるだろう。

 だから、ライトとネイレスの後ろをつけるオレンジ髪の女剣士の姿なんて見ていない。

 見ていないったら見ていないのだ。


 昨日は図書館に行ったが、連日図書館に向かうのは少し気が滅入りそうなので、1人で何らかの依頼を受けて見ようかな?と思い、ギルドに向かっていた。


 そんな時、何やらたくさんの食材を運ぶ2人の女性の姿が見えた。

 1人は協会のシスターらしき女性で、もう1人は美しい金色の髪をした神官姿の少女、クリスタだ。


 クリスタがなぜそんなたくさんの食材を持っているのかわからなかったが、とりあえず重そうだったので、声をかけて手伝うことにした。

 そして、私が受け取った荷物の中身をちらっと見たら、チーズやミルクなどの乳製品の数が多く、乳製品限定の大食いパーティでもするのか?と思うほどある。

 私が荷物の中身に疑問を持ちながらも袋を抱きかかえると、シスター服の女性が話しかけてきた。


「ルナさんでしたか?私は孤児院を経営しているマルタというものです。クリスタさんにはいつもお世話になっております」

 孤児院かー。

 ならその乳製品は子供たちの食事で、一緒に荷物を運んでいたクリスタが孤児院の手伝いを・・・。

 もっと早く知っていれば私も何らかの支援をしていたのに。


「どうも、クリスタと同じパーティのルナです。よろしくお願いします」

 とりあえず、自己紹介。

 あっちは私を知っているらしいけど、クリスタから話を聞いたのかな?

 それとも、この街では私の名前は有名?

 それなら嬉しい。


「それにしても、クリスタはなんで荷車とかで運ばないの?それを使えば便利なのに」

「それが、通行人の迷惑になるのであまり使わないでほしいとギルドから言われていて・・・」

 成る程・・・そういえば、依頼で別の街に行った時にライトが、クリスタの車は目立つし、お偉いさんに見られると面倒な事になるからできるだけ街中では出さないでくれみたいなことを言ってたな。

 私としてはこの街の中なら大丈夫だと思うし、もし奪おうとする輩が出てきたならばメッタメタに叩き伏せれば良いと思ってる。

 そして、クリスタが狙われた!ってギルドで言えばみんな協力して野盗やマフィアのアジトだろうが突撃してもれなく全員しばくだろうし。


 そんなことを考えていると、この街の教会の隣に建っている普通の民家の3倍ほどありそうな建物、孤児院が見えてきた。


 孤児院は貧しいとかそんなイメージを持たれがちだが、この街の孤児院はこの街の領主であるアメジスト伯爵から適切な支援が出されており、経営に困るという自体に陥ることはあまりないという。

 他の街の孤児院?見たこと無いからわからん。


「あっ、先生だ。おかえりー!」

 そんな声とともに、5歳くらいの小さな女の子がマルタさんの元へテッテと走ってきて足にしがみついた。

 ・・・・この子、猫獣人か。

「ミア、そんな走っちゃいけませんよ。転んだらどうするんです」

「ごろにゃ〜ん」

 マルタさんの注意もそっちのけで足に頬ずりする猫耳幼女。

 可愛い


「ミアー、どこ行ったのー。・・・って先生!帰ってきたんですか・・・」

「ただいま、ヨセフ。それと、何かあったの?」

「・・・それが・・・見てもらえば分かると思うんですけど、先に謝ります。すみません!僕には止められませんでした・・・」

「!?」

 マルタさんが驚く中、中で何かが起こっていることを察した私たちは、クリスタと共に玄関の扉をバンッと開けて中へと入る。


 すると、子供たちの泣き声が聞こえてきた。


 クリスタが、血相を変えていつの間にか手に持っていた馬車の車輪を殴打武器のように構えて、子供たちがいるであろう部屋へと向かう。

 私も、いつでも戦闘ができるように切り替えよう。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ≪血の匂いは・・・≫

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