ネイレスの休日
私は今、図書館にいる。
獣人は難しいことが苦手で、何でもかんでも大雑把。
魔法は一部の種を除いて使えない代わりに、他種族より優れた身体能力で戦う脳筋種族。
多くの人にそんなイメージを持たれているだろうが、私は違う!
現に今も図書館に通って様々な知識を蓄えている。
他の「読書?そんなことより筋トレだ!」と思考停止して言い放つ獣人共とは違うのだ!
これも偏に強くなるため、そして、強くなるため。
そのために、日々学び続けなればいけないのだ!
「あら、ルナじゃない。こんなところで料理の本を見ているなんて意外だわ」
・・・料理も修行の1つと言うことにしておいて欲しい。
無理?そうですか。
そういえば、今日はアメリーの番だったね。
昨日は尾行していたのをクリスタにバレて、ストーカーウィザードと呼ばれて涙目になっていたらしいから、今日は尾行せず図書館に来たのか。
クリスタは今何をやっているのだろう?ストーキングでもしてるのかな?
「いきなりどうしたの、ネイレス?・・・もしかしてネイレスも料理の本に興味を持ったの?」
「そ、そんなんじゃないわよ。・・・コホン、あなたがそんな女子力の塊みたいな本を読んでいたからもしかすると好きな男性でもできたのかと」
「んなわけないじゃん。今の時代はおいしい料理ができないと女性にモテないって言うから勉強してるだけだから」
「あなたは女でしょ」
・・・?
ジト目でネイレスに答えると、なんかよくわからない返され方をされた。
どういう事だ?
「これは私の言った意味を理解できないって顔ね。・・・まぁいいわ。それより、あなたが読みたいって言ってたモンスター図鑑の新版が出ていたから持ってきてあげたわ。はい、どうぞ」
「! ありがとうネイレス」
そして、私はそこそこ分厚い本を受取り、表紙を見た。
『ハゲモンスター図鑑2』
・・・なにこれ?
「気持ちは分かるわ。だけど、内容はまともだから安心しなさい。ただその図鑑に載っているモンスターがトンチキなのを除けば、ね」
・・・うん。
いろいろと言いたいことはあるけど、とりあえず読んでみようか。
変な題名をしている図鑑のページ適当にまくり、そこに記されているモンスターの情報と挿絵を見てみる。
なんか頭が黒いトゲに覆われた猛禽類の絵が見えた。
ハゲはどこ行ったハゲは。
『ハゲウニカブリタカ Eランク 頭にウニのようなトゲを生やしたハゲタカ』
な、名前が適当すぎる・・・。
それと、外見が禿げ頭のところにウニが乗っかっているようにしか見えない。
こいつはモデルがハゲタカだからこの図鑑に載ってるの?
いろいろと言いたいことはあるが、とりあえず次のページを捲る。
『満月熊 Dランクモンスター 満月みたいな円状のハゲがある熊。魔法を使う』
・・・ページを捲る。
『ハダカのイルカ Dランク 肌色のイルカ 賢い』
・・・・・・ペラッ
『アーマードデバネズミ Cランク 鋼鉄の鎧を纏ったハダカデバネズミ。油断して戦ったDランク以下の冒険者がよく返り討ちに合う』
「ナニコレ」
「そのモンスターは実際にいる存在よ。決して誰かの妄想の類ではないわ」
終わってない?この世界の生態系。
だけど、内容は微妙だが、私が知らなかったモンスターの情報を知ることができるのは良いことだ。
そこはネイレスには感謝しなくては。
「持ってきてくれてありがとね」
「構わないわ。自分の本を探している時に偶然見つけただけだから気にしないで」
そう言って、ネイレス自身が持ってきた本、魔法の本を手に取る。
やっぱりネイレスはここで魔法の勉強をしているのか。
さすが知識欲が強いウィザード系統の上位、アークウィザードだ。
そう思いながらネイレスの傍らに積み上げられた5冊の本を見ると、1冊だけ本の背表紙に書かれたタイトルが他と違うように見えた。
なになに・・・。
『熊獣人でもできる。女子力が高い料理のレシピ大全』
これ、料理の本だ。
「! ルナ、あなた・・・見たわね?」
「そんな吸血行動を見られて正体がバレた吸血鬼みたいに言われても・・・」
しかし、ネイレスが料理の本か・・・。
「こ、これはち、違うわよ。・・・そう、料理は魔法に通じるものだから実質魔導書と言っても過言ではないわ」
なんかネイレスがトンチンカンなことを言い出した。
それが過言であることなんて獣人でも分かるよ。
分かるかなぁ・・・。
獣人の知能がアレな事実は変わらないが、パーティの頭脳のネイレスがアレになっては困るので、騙されたふりをしよう。
「そ、ソウダネー」
「情けはいらないわ、余計に惨めになる!」
この人、面倒くさいな。
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≪・・・面倒だ≫
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