私が思うスカウトの役割と
「ル、「灰狼」さま!?だ、大丈夫ですか・・・。もしかして私が・・・」
訓練場の地面に手をついてorz状態になる私を見て慌てだすリス系少女の慌てた声を聴きながら、私は後悔の念に押しつぶされた。
弓のアーツなんて教えれねぇよー。涙
オールラウンダー気取りのライトや、実家が猟師のクリスタならともかく、私は弓のアーツなんて習得していない。
だから教えることができないし、むしろ私が教わる側になってしまう。
罠とかのアーツも習得してない。
罠関係のアーツは設置時じゃなくて相手が引っ掛かった時にアーツ名を言って発動する物ばかりで、罠の効果を増大させる効果はあるが、目立ってはいけないスカウトが逆に注意を集めてしまう可能性があるのでなし。
たまに、私の罠設置の腕前がアーツに間違われるけど、アーツ申請していないからアーツのように教えることができないし、私くらいの段階まで行くのには最低3年くらいはかかると思う。
だから、罠系のアーツについては除外する。
なら、初めてのスカウトの後輩に一体何を教えればいいんだ!?
・・・ん?スカウトの後輩・・・あっ!
そうだ!別にスカウトは武器がすべてではない!
アーツ以外にもいろいろと教えることができるし、何より私のスカウトとしての心得はまぁまぁ役に立つのではないだろうかと思わなくもないだろう多分。
とういか、この子は最初からスカウトの技術を教えてほしいと言っていたので、初めからこうすればよかったのか。
ということで、起き上がって後輩少女に向き合う。
「ひぅ!?・・・大丈夫ですか、「灰狼」さま・・・」
「驚かせちゃってごめんね。後、「灰狼じゃなくて」ルナってよんでいいからね」
「・・・分かりました。ルナさま」
「さまはつけなくていいよ。それと、私は弓のアーツ習得をしてないから教えるのはスカウトの技術が中心になるけどいい?」
「は、はい、大丈夫です。お願いします・・・」
良かった~、失望されてない。
ここから巻き返す。
「まず始めに、スカウトってどういう役割か分かる?」
「え、えっと・・・周囲の警戒や偵察、ですかね。後はみんなの手助け・・・」
「おー、大体あってるよ。雑用係とまではいかないけど、直接戦闘せずに周囲の警戒や偵察、戦闘時のサポートが基本で、主に相手の行動を邪魔したりするって感じかな?」
「えへへ」
可愛い。
「そこでアドバイス。スカウトをこれからも続けていくのなら心掛けなければならないことがあります。今からそれを教えるよ」
私がそう言うと、ラトちゃんはふにゃっとした表情から真剣な表情になり、一言一句聞き逃さないと言わんばかりに私を見つめる。
この子、最初会った時は冒険者やっていけるか心配だったけど、こんな表情ができるなら大丈夫か。
私は、自分のスカウトとしての心得を言葉にする。
「卑怯者になることだよ」
「え?」
スカウトは常にパーティに迫る危険を想定しなければならない。
森の中に入れば、いつモンスターが襲ってくるか分からず、戦闘中だとしても、予想外のアクシデントが存在する。
だからこそ、スカウトは自分たちがやられたら嫌なことを想定しなければならない。
危険を予想しなければならない。
地面を掘り進むモンスターが足元から出てくるかもれない。
空から巨大な鳥のモンスターが襲い掛かってくるかもしれない。
洞窟を調べたら、そこは盗賊のアジトかもしれない。
いかなる状況でも襲い掛かってくる困難を見極めるには常人は持たない捻くれた考えが必要だと思う。
それは戦闘時にも言える。
スカウトの戦い方は前衛や後衛とは違って、仲間のサポート、敵の妨害が主だ。
相手が何をやられたら嫌か、敵の足元を掬うにはどこをどうすればいいか。
それを見極めなければならない。
そうすればそれなりにはいいスカウトにはなれると思うよ。
私の持論だけど。
「私のスカウトとしての心得はこんな感じかな?」
ラトちゃんを見てみると、なんか本当に自分はそんなこと出来るのかっていうようなぽけーっとした表情をしている。
「わ、私なんかができるでしょうか・・・そんな大変なこと・・・」
「うーん、性格がいい人はそんな考えをするの難しいから、初めは難しいと思うよ。だけどいろいろ経験すればそういうこと考えられるようになると思うから、私の言葉を頭の片隅で覚えておいて欲しいな」
「わ、分かりました。頑張ります」
「よし!それじゃあ弓のアーツは教えられないけど、次は、音を出さない歩き方とか教えてあげるね」
「お、お願いします!」
良い返事♪
その後、ラトちゃんにいろいろ教えていたら、あっという間に夕方になった。
街に実家があり、そこで暮らしているらしいので、女の子1人で夜道を歩かせるのは危ないから今日のアーツ教室ならぬスカウト教室はお開きとなった。
そうそう、たまにラトちゃんに修行をつけることになったんだよね。
ラトちゃんは畏まっていたけど、私としては今日1日では教えきれなかった部分もあるので、もっと教えたかったから私の方から頼んだ。
そんな感じで、ラトちゃんとの関係はまだ続きそう。
「あ、あの・・・ありがとうございます。わざわざお家まで届けてくださって・・・」
「私の弟子1号である可愛いラトちゃんが誘拐されないか心配だからね。このくらいはさせてよ」
「か、かわっ」#
「あっ、そろそろラトちゃんが言ってた家の近くだね。最後になにか私に聞きたいこととかない?冒険者関連以外のことでも答えるよ」
「!な、なら1つだけ・・・」
お、あるのか。
どんな質問かな?
こういうのって使ってる化粧水とかおすすめのカフェとか聞かれるってネイレス辺りが言ってたからちゃんと調べてある。
今日この時の為に!
さあ、どんとこいラトちゃん!
「ルナ先輩って、ライトさんと隠れて付き合っているって本当ですか?」
ピシッ
・・・
「え、えーっと、ラトちゃん。どこでそんなホラ話を聞いたの?」
「え?あ、その・・・他の子が噂しているのを聞いたんです・・・」
・・・どいつがそんなデマ流しやがった。
この後、ラトちゃんにそんな事実は絶対にないと言い聞かせた。
頑張った甲斐もあってラトちゃんは信じてくれたようで何よりだが、どのくらいの規模の噂になっているのかがわからず、対応は後日となった。
それからしばらくたったある日、冒険者ギルドにてある冒険者が件の噂話を流しているところを発見したので絞めておいた。
だが、結構この話が広まって、私1人では消せないほどに・・・。
私の結婚までの道のりが・・・遠ざかる・・・。
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≪忌まわしい≫
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