アメリ―の休日 2

 少女たちのじゃれ合いが終わったのは、アメリーが全員を捕まえた後だった。

「ふぅ、逃走術の訓練は終わり。アーツの訓練に戻るわよ」

「訓練だったんだ。今の」

 アメリーは、私の声を聞こえない振りして、少女たちを一列に並べる。

「それじゃあ1人ずつアーツの『スラッシュ』の抜き打ちテストをするわ。右から順番にやっていくから」

「「「「「えー」」」」」

 合計14人の少女は、アメリーの突然の無茶振りに不服の声を上げるが、アメリーの表情から本気だと感じたのか、全員が真剣な顔になる。


「まずサラから。始めて」

「分かりました。『スラッシュ』!!」

 サラと呼ばれたくすんだ金髪の短髪少女は、剣士系アーツの基礎、『スラッシュ』を放つ。

 アメリーの指導のおかげか、拙いながらもちゃんとアーツとして発動された。

「お姉さま、やりました!私、初めてアーツを使えました!」

「初めてにしてはいい『スラッシュ』だったわ、おめでとう。だけど、まだ安心したら駄目よ。何度か発動して、いつでも『スラッシュ』を発動できるように練習しなさい」

「はい!分かりました!」

「それじゃあ次はパープル!サラができたからと言って気張らずにやりなさい」

「わ、分かりましたわ!」

 なんか本格的な修行が始まった。

 置いてけぼりの私は少女たちが放つ不出来ながらも力強さのあるアーツを次々に放つ様子を見ていると、


「あの、「灰狼」さま・・・」

「ん?」

 小さな声で呼ばれたので後ろを見てみると、小さな女の子がいた。

 背の高さからして10歳くらいだろうか。

 ・・・いや、この子は背が低いだけであの子たちと同年代くらいか。

 だって冒険者の装備をしているし。

 それに、装備の特徴からしてスカウト系?

「もしかして「灰狼」さまもアーツ教室を開いているのですか?」

 アメリーの全体指導ってアーツ教室って呼ばれてるんだぁ。

 私の心の中での呼称と同じなんだ。

「私はそういうのはやってないかな。もしかして何か聞きたいことあった?」

 この子は見た感じスカウトだから当たり前だけどアメリーのアーツ教室ではスカウトの技術は学べないか。

 だから同じスカウトである私に何か聞きたかったのかな?

「あ、え、う〜、そのぉー」

「落ち着いてー、私の勘違いなら違うって言って良いんだよ」

 なんか目線が虚空をさまよい出した少女は、深呼吸をしてから覚悟を決めたような表情をして、私に向かって頭を下げた。

「私に、スカウトの技術を教えてください!」

 やっぱりか。

 ・・・うん、今は暇だし、ここで断ったら親しみにくい人物って印象持たれそうだから受けるか。

 というか、さっき私からなにか聞きたいことあった?と聞いた手前、断るのは申し訳ない。

「いいよ。私の技術、ある程度なら教えてあげる」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ≪許す≫

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