アメリ―の休日
クリスタがライトを連れてデートに行った。
その後をストーキングする2人の女性がいたような気がするけど、私は気にせず街の散策に向かう。
最近、街の中を歩いてなかったので新しい発見があるかもしれない。
最近できた武器屋とか道具屋とか肉屋とかないかなと思いながら探す。
昼頃まで屋台で目新しい食べ物を食べたり、友達のテイマーの少女に似合いそうなネックレスを買ったりしながら街の中をフラフラ歩いていると、広い空き地を見つけた。
ここは確か、新米の冒険者がギルドにある訓練場が開いていない時に利用できるように、ここの土地の所有者である元冒険者が無償で公開しているところだ。
昔、私も利用したことがありなんやかんやお世話になったが、ある時、ライトが新技の開発でうっかりやらかしてしまって巨大なクレーターを作ったことでパーティ全員出禁になった。
今では、その時の損害も弁償したので、条件がライトだけ出禁になったから私たち、女性陣は利用できるようになっている。
そんな空き地には、今日も新米冒険者たちがたくさんいた。
と言うより、なぜか女性冒険者たちが多いような・・・。
こっそりと近づいてみると、中心には見覚えのあるオレンジ髪のポニテ剣士がいた。
今朝、ライトとクリスタのデートを追跡していたアメリーだ。
この子はいつ分身の技を覚えたのだろうか?
「籠める魔力が少ない!そして剣筋がぶれてる!アーツは通常の攻撃とは違って必殺の一撃、一撃で相手を仕留めるためのものよ。そんな剣ではゴブリンも倒せないわ!」
「「「は、はい!」」」
どうやら、新米冒険者の指導をしているようだ。
その真剣な姿は、今朝見た好きな男のデートをストーキングする残念剣士と同一人物とは思えない。
なら、今朝見たあのオレンジポニテは何だったのだろうか?ドッペルゲンガーかな?
「・・・やっぱり基礎のアーツって覚えるのも大変なのね。駆け出しを思い出すわ」
「へぇ、アメリーってこういうことしてたんだね」
「ピッ!?な、何よ、ルナじゃない。びっくりさせないでよ・・・」
うっかり気配を消して声をかけてしまったら、なんか聞いたこと無い可愛い声を出した。
これが萌えか。
「そういえばルナは初めて見るのね。私、ギルドの受付の子に頼まれてアーツの習得を手伝っているのよ。自力で習得するのは時間が掛かるでしょう?だからコツとか教えてるのよ」
「へー、それって依頼?」
「そうよ。そうでなきゃこんな大人数の面倒見きれないわよ。まぁ、本当は今日は休みにしていたけどね。街でフラフラしていたらこの子たちに声をかけられたの」
なるほど、ストーキング中にこの子たちに見つかっていろいろあってアーツ教室を開くことになったのか。
いろいろの部分について気になるが、アメリーが誰かに教えるという行為ができたことに驚きを禁じ得ない。
昔のアメリーは結構感覚派の天才型だったからズバーッとやってバーンだとか擬音を使った教える気がないような指導をすると思っていたが、さっきの様子からちゃんとした指導ができていたように思える。
その証拠に、新米冒険者たちはアメリーを尊敬の目で見ており・・・。
「あ、あの・・・もしかしてアメリー姉さまのパーティメンバーの「灰狼」さまですか?」
アメリーの教え子の1人である亜麻色の髪をおさげにした13歳くらいの少女が話しかけてきた。
冒険者は12歳からなれるので、成人扱いされる15歳以下の子どもたちも冒険者になれる。
そんな未成年冒険者は生活ができる程度の街中でできるような簡単な依頼しか受けれない代わりに、衣食住の最低保証を冒険者ギルドが提供して、アメリーが行うようなギルド公認の高位冒険者主催の指導を月1で受けなければならない。
だから、街中での依頼が少ない時は訓練場やここで鍛錬を行う新米冒険者の姿が見られる。
ちなみに、高位冒険者にはその人物の特徴や偉業を称える二つ名がつけられ、私の場合は「灰狼」であr・・・お姉さま?
「アメリーって妹いたんだ。知らなかった」
「違うからね!この子たちが勝手に私をお姉様って言ってるだけだから!」
・・・この子たち?
「お姉さま、いつも私たちにそう呼ばれて嬉しそうにしてたじゃないですか」
「私たちにこのお姉さまについて来なさい!って言ってくれたじゃないですかお姉様!」
「お姉様!さっきの驚いた声可愛らしかったですわお姉様!」
「あんたたち一旦黙りなさい!」
「「「「「きゃ〜、お姉さま(様)が怒った〜!」」」」」
アメリー指導していた少女たちが可愛らしくお姉様お姉様と言い、キレたアメリーが少女たちを追いかける。
なんだか、少女たちは嬉しそうな悲鳴を上げ、アメリーは怒りの声を出しながらも、本気を出していない。
なるほど、これがじゃれ合いか。
それにしても、アメリーが想像以上に慕われている。
アメリーが決めたのか、このアーツ教室には男の新米冒険者がいない。
だからか、少女たちも異性を気にせず、素の自分を出せるのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます