第2話救助隊と危険とずぶ濡れと!

「あっ。来てくれた」


皆んなが喜んだ。けれど、ロープが川へと引き摺られて行く。救助隊の人達が側に着くまで何とか持ち堪えるしか無い。


「皆んなもう少し頑張るんだ!」


新葉は言って励ました。


「よいしょ。よいしょ!」


言って、皆んな頑張って引っ張り続けた。川の岸まで一人一人が到達して来た。先に助かった二人は藤遠君と木村君を手を伸ばし、川の水から、引っ張り上げた。次に自力で 健慎君が川の水から上がった。


「プツッ!」


ロープが切れた。二人は勢いで後ろに引かれた。


「サッ」


救助隊の方が手を伸ばして先生を救った。先生は救助隊の方にしがみ付き離れない。救助隊の方は樹君を救おうとするが先生に阻まれ身動きが出来ない。 健慎君が手を伸ばし樹君のロープを引っ張る。腰に着けてあったロープに守られた為、辛うじて助かった樹君。


「皆んなもう一度引っ張るんだ。力を合わせて、腰を低くして、リズムに乗って、掛け声に合わせて、少しずつ後ろに引いて行くんだ。濁流に負けるな! 樹君を助けるんだー!」


新葉は叫んだ。


「よいしょ。よいしょ。よいしょ。どっこらしょ!」


樹君は岸まで引っ張られた。救助隊の方に引き上げられ、岸に上がれた。


「ドバーッ。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!」


岸の上まで泥水が上がって来た。


「逃げて、上まで上がって、ここは危険です!」


救助隊の方々が騒ぎ出した。皆んな慌てて逃げる。E組の先生は一の一番に逃げ出す。高い所まで逃げると一人一人を確認した。新葉はずぶ濡れで震えている樹君を見て、


「樹君。何であんな危険な事したんだ。僕は皆んな死なせたりしないって言った筈だ。何でだよ〜。樹君なんて大嫌いだ。こんなに人を心配させてなんかあったらどうしようって、怖かったんだよ!」


言って、新葉は怒った。樹君は頭を掻いて、


「ごめん!」


一言呟くように謝った。


「有難う。皆んなを助けてくれて………………!」


新葉は呟く様に御礼の言葉を述べた。


「うん」


樹君の目には光る物があった。雨なのか涙なのか定かでは無かった。先生方は救助隊の方々に御礼の言葉を述べると、救助隊の方々は早々に引き上げて行った。

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