第4話 ヒトと魔物 ⑾
ボル達が町の門を出て、3パーティーがどこの探索をするか話し合っているところまで遡る。
このときには太陽が出始めて、周りは明るくなりつつあった。
偵察蜂はすぐに冒険者が町から出てきたことに気づいた。そしてナトと凜とオルミーの連絡用蜂に通信を入れた。
オルミーと凜はいつも通り抱き合って寝ていた。
「ブーン、ブーンブーンブーンブーン!」
凜の耳元で大きな音が鳴り、凜は飛び起きた。
寝起きだったのと、初めての連絡蜂のブザー音のようなものに驚いた。
「どうしたの、連絡蜂さん」
「偵察蜂から連絡。ここからはそのまま伝える」
ピクピクと触覚が動いていた。
さっきのブザー音みたいなの電話みたいだった。それに今思えばあの触覚アンテナみたい。
凜はまだ寝ぼけていて、そんなことを考えていた。
隣のオルミーも起きていて、連絡蜂から同じく通信を聞いていた。
「こちら偵察蜂。町から3パーティー、計11人の人間が出てきた。全員が冒険者だと思われる。これから私たちはそれぞれのパーティーについていく」
冒険者という言葉を聞いて目が覚めた。最近は見ないと思っていたが、私が気づかなかっただけで森に来ていたのかもしれないと思った。
返答するべきか悩んだ。まだ女王としての話し方が決まってないから。
「凜様の言った言葉を私がそれっぽく変換できる」
顔に出ていたのか、連絡蜂さんは私の悩みを一瞬で解決してくれた。
「え、本当?それじゃあお願いしていい。了解。そのまま偵察してって伝えてくれる」
「了解」
通信が終わった頃にクインとナトが部屋に入ってきた。
「ごきげんよう、凜、オルミー。一応連絡があったので来ましたわ」
「おはようございます」
「おはよう、とりあえずは偵察を続けるように言ったけど良かった?」
「大丈夫ですわ。それもナトから聞きましたわ。これからどうするかしら」
どうやら連絡蜂さんは私の言葉をナト達にも送っていてくれたようだ。
「とりあえず全員を巣に戻しておこうか。それとさ魔物って人間の言葉理解できるの?」
今まで私は魔物と話せていたから気にならなかったが、普通は人間は魔物と話せないらしい。それは人間が魔物の声を聞くことができないからなのだが、逆はどうなのだろうか?
「わたくしたちニホンミツバチは無理ですわ」
「わたしたちもですわ」
「そうか、」
もしできたら人間の話から情報を聞き出せると思ったんだけど。賢いミツバチでも無理なのか、残念。
「でも聞いた声をそのまま凜に伝えることならできると思うわ。少し変にはなるかもしれないけど」
「え、本当。それなら偵察蜂にお願いしてもらって良い?というか連絡蜂さんお願い」
やっぱりミツバチは賢い!
その後からは偵察蜂から冒険者の話をそのままコピーして伝えてくれた。ぎこちなかったが意味は理解できる程度だったので何の問題も無かった。
外国語のリスニングができない頭の悪い人間より、魔物が上だということがこれだけでも明らかだ。人間は愚かでクズ!
だが冒険者の話には問題があった。
私が町で指名手配になっていた。小さな子供を攫った犯人の協力者として。
実際は犯人の協力者じゃなくて、私が犯人その者で子供も殺してるのだが。
まあそこは問題ではなく、これで確実に私は町に入ることができなくなった。本当にミスった。もっと人間の情報をとってからやるべきだった。
でもそうすると案内アリさんが死んでたかもしれないし……
せめて2回目の犯行をやめれば良かったか?そうしてたら2回目をやる前に指名手配されてたかもしれないから連続で犯行をしたのはむしろ良かったか?それならもっと殺しておくべきだったか?
「凜、3つめの冒険者パーティーも動き出しましたよ」
隣に座っているオルミーが話しかけてきて、思考の海から脱出することができた。今考えるべき事ではなかった。
今はナトがこの部屋にいる全員に偵察蜂からの情報を伝えている。だから連絡蜂さんは私の耳で静かに止まっている。
「これからどうするかしら、凜」
「えっと、どうすれば良い、オルミー?」
「え、私ですか。とりあえず冒険者達は凜を探してるのですよね。そうなると魔物を狩るのが目的ではないので周りを散策すると思うので私たちの巣の入り口を隠した方が良いのではないですか」
「確かにそうだ。ナトさん働きアリといる蜂に巣を隠すように言ってくれない」
オルミーがいつも通り落ち着いてるのを見て、私も落ち着いた。
「はい、分かりました」
「というか普段から隠しておけば良かったね」
「まあ普段だったら冒険者は私たちが穴の中に住んでるとか考えないから問題ないですからね」
「そうだね。え……」
「どうしたのかしら、凜」
「えっと、草原にも花を取るために3つくらい穴開けてたよね?」
その穴に落として人間の子供も殺したし。
「そうですね。それがどうしたのですか?あ、……そこも隠さないとですね。ナトお願いしても良いですか」
「はい、分かりました」
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