第4話 ヒトと魔物 ⑼
ボル達は深い穴の底にいた。
すぐに先に進もうとしたが、トスが少し待ってくれと言ったことで休憩している。
トスは先ほどの落下で怪我をしたが、ポーションで傷はなくなっている。しかい、さっき感じた痛みは記憶として残っている。
身体強化を使わずに、お尻に火の弾が当たり、そこそこの速度で地面に落ちたことでかなり精神的にきているようだった。
俺も身体強化を使えば良いことにトスが飛んでから気づいたため、少しの罪悪感があり、素直にトスが精神的に回復するのを待つことにした。
かなりトスはダウンしてる状態なので座ることにした。テリはすでに座っている。
冒険者になってからは地面などに座る抵抗もなくなってきたから、汚れることを気にすることなくドンと勢いよく座る。
だが土煙は立たない。地面に手を置いても汚れなかった。
「テリ、この地面なんか変じゃないか」
「そうですか?……確かに土が何か薄い膜に覆われてるようで汚れないですね。たぶん犯人がきれい好きなんですよ」
「確かにそうだな」
トスはまだうつむいたままだ。
やることもないのでこれから進む穴の方に目を向ける。穴はずっと横に延びていて、奥は真っ暗でどこまで続いているか分からない。
今いる空間はテリの火の玉で照らしていたので、自分で火の玉を出現させて穴の方に動かすが、特に変わった物はなくひたすら奥に延びている。
ここを進むのかと思うと憂鬱になるが、ここさえ進めばシルバーに上がれるなら悪くはないなとも思う。
その後は魔力の温存のためにも俺のファイヤーボールは消して、地面を眺めていた。
30分ほどボウっとしているとトスが立ち上がった。
「リーダー、そろそろ大丈夫っす。待たせて申し訳ないっす」
「そうか、それじゃあ行くか!」
「はいっす」「はい」
チンピラーズは屈みながら穴、トンネルを進んでいった。テリが先頭でファイヤーボールの火の弾で照らしながら進んだ。俺は真ん中だ。
20分くらい歩くと分かれ道があった。今まで歩いてきた1キロくらいはずっとまっすぐだった。
「リーダー、どっちに進みますか」
「こういうのは左だな」
自信満々に言ったが自信は無い。たしか何かしらの本にそんなことが書いてあった気がする程度で選んだ。
「分かりました」
そこからは20メートルおきに分かれ道が現われた。どちらに進むかはその時の勘に頼ることにした。時には行き止まりになったりしたが、気にすることなくどんどんと進んでいった。
テリとトスは俺が道を間違っても、たまにはリーダーも間違えますよねと言い、行き止まりではなかったらさすがリーダーとはやし立てるものだから道に迷ってるとは考えずに進んでいった。
数時間歩いたあたりからは誰も話さなくなった。その後も進み続けた。
俺たちは何時間歩いたかも分からなくなっていた。
そしてついには狭いトンネルの中で体育座りをしていた。
それに始まりよりも穴が小さくなってる気がする。今では進むには屈むと言うよりも、四つん這いになって進むといった感じになっている。
周りは相変わらず薄い膜でコーティングされているようだ。
そのおかげでまったく服は汚れていない。まるでまだ探索を始めてないかのようだ。
一方で体力と気力は尽きかけていた。
「リーダーどうしますか」
「もう犯人は見つけられないだろ、それに帰り道も分からねえ。魔法で土を破壊しながら登っていくしかないか」
「そうっすね、でもかなり深いっすよ」
「斜めに登ってけば問題ないだろ。それに体力はもうないが、魔力は明かりを灯しているテリしか使ってないから、地上までは持つだろ」
「そうっすね、リーダー」
「でもリーダーここで魔法を撃ったら俺らにも当たりますよ」
「そうだな、とりあえず開けたところまで進むか」
最期の気力を振り絞り、四つん這いで進み始めた。
30分ほど進んだが、景色は全く変わらない。狭いトンネルの中だ。
前を見ても、後ろを見てもまっすぐ続いて、奥は暗くて見えない。
「そういえば開けた空間に出たのはどれくらい前だ?」
「確か……この穴に落ちたときだけっす」
「そうです、俺たちはそれからずっとトンネルの中です」
もう動けないと言うくらい疲れ切っていた。テリとトスも地面にお腹をつけて動かない。
俺たちは道に迷い、かなり危険な状態だと改めて理解した。
唯一の救いは魔力をほとんど使ってないことだけだった。だからもう魔法に懸けるという選択肢しか考えられなかった。
ーーーあとがきーーー
明日(2024/11/29)からラストスパートです。3話ずつ出して11月中に完結です。
このあとがきを今日見れてるのは1人いるか、いないかでしょうが、最後まで楽しんでもらえればありがたいです。
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