第4話 ヒトと魔物 ⑻
ナトの触覚がピクピクと動き、数分後に7匹の蜂が部屋に飛んできた。
「あ、連絡蜂さん!連絡蜂さんはこれからずっと私のところに付いていてね」
すぐに見つけられた。他のミツバチとあまり違いは無いが、生き物好きの凜にとっては間違う方が難しい。
「はい、よろしく」
「よろしく、スリスリ!」
これから一緒に居るんだからスキンシップは大切だよね。クインとは違って少し小さくて。これはこれで良い。
クインは凜のスリスリを気にすることなく会話を続ける。
「凜、偵察は朝と夜で分けて3匹ずつでいいかしら」
「いいよ」
少しブラックかもしれないけど大丈夫だろ。地球での私は睡眠時間以外研究してたし。
「それじゃあ小さくするね」
この偵察を担当する蜂は偵察蜂と呼ぶことにした。
偵察蜂を全員標本箱を使って地球にいるミツバチサイズまで小さくして、3匹は町の門のところに行ってもらった。残りの3匹は明日の朝に交代だ。
「連絡蜂さんも小さくしても良い?」
「私はあなたの言うことを聞く。あなたは女王だから」
「これからずっと一緒なんだからそんな他人行儀じゃなくて良いよ。それと命令じゃなくて質問」
「話し方はこれに慣れている。小さくなっても良い」
「じゃあ小さくするね」
偵察蜂と同じように連絡蜂さんも小さくした。
「連絡蜂さん、私の耳元に止まってくれない」
「了解」
虫イヤホン完成!
これでいつでも連絡取れるし、なによりかっこよい。
一つの問題点は小さくしたことで触りにくいところだ。まあこれくらいは我慢するか。
クインを触れば問題ないしね、と思い、クインの方を見るとクインはピクッと体を揺らした。たぶん気のせいだ。
「オルミーにつく連絡用の蜂も小さくする?」
「お願いします」
後ろで存在感を消していた蜂が初めて声を上げた。
「私がこの中にいるのは場違いの気がして辛いので小さくしてもらえたら幸いです」
他の働き蜂とは話し方も雰囲気も少し違かった。
オルミー用の連絡蜂だから、一応オルミーの意見を聞いた。
「私はどちらでも良いので彼女の決定を優先しますよ」
「分かった。じゃあ小さくするね」
同じ手順で小さくした。
「ナトさんは小さくならなくて大丈夫?」
「ナトは大丈夫ですわ。わたくしの側にずっといるのでこのままが良いですから」
「クイン様」
ナトはクインの事を眺めていた。
「了解、それじゃあ今日はこの辺で解散にする?」
「そうですね、もう夜も遅いですし」
「わたくしもそれで構いませんわ」
「じゃあ解散で、おやすみ、クイン、ナトさん」「おやすみなさい、クイン、ナト」
「ごきげんよう、凜、オルミー」「失礼します、凜さん、オルミーさん」
クインとナトは部屋から出て行った。
私たちが話している間に働きアリが掘った空間でクイン達は寝た。アリの巣に蜂の巣を作るまでの間の仮部屋。
「それじゃあ私たちも寝ようか」
「そうですね、き、今日も抱きついても良いですよ、凜」
「え、今日から連絡用の蜂が2匹も近くにいるけど良いの?」
私の耳には連絡蜂さんが今も止まっている。オルミーの連絡用の蜂は存在感もないし、小さくなったことでどこにいるか分からないが近くにはいるはず。
まあ私的には見られてるとか気にしてない。だってただ触ってるだけだから。
でもオルミーはもしかすると女王として抱きついてるところを見られるのがイヤかもしれないから、一応聞いておく。
「み、見られてる?……で、でもでもこれから連絡用の蜂さんとはずっと一緒だから気にしてもしょうが無いですよね!だから気にしないでいきましょう!ねえ、凜!」
なんか必死な気がするけど私的には触れた方が良いからもちろんOKだ。
「オルミーが良いならいいけど」
いつも通りオルミーと抱き合って寝た。
「ブ、ブーン!」という音が耳から聞こえた気がしたが、眠気に負けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます