第4話 ヒトと魔物 ⑹
働きアリたちが死体を運んできてくれた。
「あとは待つだけだね。それとさっきから思ってたんだけど、なんでオルミーの隣に働き蜂がいるの?」
「働きアリにこれからどうなるか伝えるときの移動時間とかの間にクインと班編制について話してました。この蜂さんの通信を使って」
「ずるい!私も2人と話していたかった」
「でも凜が班編制とかは私たち2人で決めてって言ったんですよ」
そうだった。完全に忘れていた。
「うー。というか私の連絡蜂さんは?」
「クインと巣に戻っていましたよ」
なんでオルミーにはいて、私にはいないの?というか連絡蜂さん自分から私に付くって立候補してたよね。
もしかして案内アリさんみたいに私のこと嫌ってるの?
いや、案内アリさんは私のこと嫌ってないか。なんかギギギって聞こえる気がする。
「凜はみんなの前でもこんな調子で話すの?」
「どういうこと?みんな?」
オルミーの言いたいことがまったく分からなかった。
「働きアリや働き蜂の前でもこんな感じの馴れ馴れしい感じで話すのかってことですよ。さっきクインと話してたときに、クインがそう言ってきたんですよ」
「何か問題あるの?というか前に働きアリさん30匹の前で話したときはこんな感じだったよね。少し説明のところは真面目に話したけど」
「私もあのときは特に何も思ってなかったんですが、クインに言われて気づきました。私は今まで子供達の前では威厳ある感じで振る舞ってきました。一昨日の子供達が人間を食べて寿命を延ばしたときは、取り乱してしまいましたが、これからも子供達の前ではきっちりしていこうと思ってます。クインも女王っぽく話してるじゃないですか。たぶんクインも私と同じように今まで子供達と距離を置いてきたと思うんですよ。でもさっき話したら、これからもこのまま女王として堂々としていると言ってました」
私がいないところでめっちゃ話してるじゃん。私がアリの魔法について考えてる間に。私もそっちに混ざりたかった……
「つまり上に立つならそれ相応の態度を取った方が良いって事?」
今までこんなことを考えたこともなかった。
というより自分が上に立つ経験が無かった。下に立つ経験も無いが。つまり前世ではずっと一人だったということだ。
「まあそういうことですね」
「でも私は女王じゃないよ。それに働きアリ達はオルミーが私の言うことを聞くようにと命令してるからいうことを聞いてくれるだけで」
「私の命令というのもありますけど、みんな凜には感謝してると思いますよ。だからみんな凜に協力してるんですよ」
「そう?」
あまり歓迎されてるとは思えなかった。返事はギギギだし。
「そうですよ。凜が作戦を話した後の穴を掘る作業はいつもよりもみんな熱心でしたよ。みんな凜が私たちのことを思って行動していると理解してるんですよ。それに凜の向けてくれる笑顔はみんな大好きなんですから」
「本当?」
「本当ですよ!きっと働き蜂にもそれが伝わりますよ」
地球では生き物、特に昆虫とは意思疎通なんてほとんどできなかった。この世界では会話はできるけど信頼されてるかは分からなかった。
でも互いに信頼しているオルミーに言われてると素直に受け入れられた。
「オルミーに言われるとそんな感じがしてきた。それじゃあ私もみんなの前では女王っぽくした方が良いのかな」
でも女王っぽくなんてどうすれば良いんだか?オルミーは「~してください」みたいな優しい感じの命令口調で、クインは「ですわ」みたなTheお嬢様だけど。あとは二人とも態度が堂々としていて上の立場にいる感が出てるよね。
この2人をまねすれば良いのか?
「オルミー、まだ女王っぽい感じが分からないから、しばらく私はみんなの前では黙っとくよ」
とりあえず今は保留にしておこう。他にもやらなければいけないことがあるから。
「分かりました。それじゃあクインにもそう言っとくので、凜が女王っぽく振る舞えるまでは私たちが命令を出しておきますね。あと私たちもみんなの前では凜のことさん付けで呼びますね」
「うん、お願い。……え、私が一番偉いことになってない?」
「もちろんそうですよ。私はクロヤマアリの女王ですけど、凜は魔物の女王になるのですから」
は…………本当に?
まあいいか。一番偉かったら魔物触りたい放題だよね。うん、そう考えよう……
それに元々魔物の地位を変えるまでは進み続けると決めたのだから悪くはないだろうと思うようにした。
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