第4話 ヒトと魔物 ⑶
門を出てすぐのところでリーダーの3人は集まっていた。
外はやっと太陽が出てきて明るくなるところだった。
こんな朝っぱら集めやがってくそジジイがとボルは心の中で思っていた。
「僕たちは森の奥まで探してみますね」
俺はこのいかにも真面目で人当たりが良いこいつが嫌いだ。俺らのことを下に見ている気がして気に入らない。
「じゃあ私たちは町の門の逆側を探してみますよ」
このババアは俺のババアに似ていて気に入らない。
「ああ、俺たちは好きにやらせてもらうぜ」
それぞれのパーティーは別々に探す流れになったことだけはありがたい。
俺たちは少し前までチンピラ、俺らは自分たちのことをチンピラとは思っていないが、あのジジイのギルド長はチンピラと言うからまあチンピラだったことにしている。
だから冒険者の仕事についてあまり分からない。特に今回の依頼のように魔物討伐ではないものは初めてだったので、ずっと気に食わないヤツらといるのではないかと思い、イライラしていた。だが、ここで分かれられる事になったのでかなり気分が良い。
たぶん仲間のテリとトスも俺と同じ気持ちだと思う。
こいつら2人とは学生時代から一緒で俺のことをリーダーと慕ってくれている。今でもそうだ。
俺も人のことはいえないが、この2人は俺以上に頭が悪いから、俺が面倒見てやらないとと密かに思っている。
その分雑用はやってもらってるけどな。
「じゃあ気をつけて」
「私たちもいきますね」
2つのパーティーはすぐに行ってしまった。
「リーダー行っちゃいましたね」
少し横に大きいテリが後ろから話しかけてくる。
「そっちの方が清々していいだろ」
「そうっすね。それにしても昨日呼び出されたときはビビりましたっすね」
眼鏡をかけたチンピラには見えないトスが横に並んでくる。
元々2人とも暴力的ではなく、根は優しいヤツらだ。2人ともボルに懐き、少し暴力的になったが、それでも3人ともそこまで悪ではない。
「本当そうですよ。人間を殺したのがバレたかと思いましたよ」
「俺は違うって言っただろ。あのとき、誰にも見られてないんだからバレるわけないだろ。それに次の日には死体が消えてたんだから」
実際は昨日怖かった。またジジイにボコられるのではと思った。いやそれで終わるならマシか。
今までも犯罪には手を出していなかったが、一週間前に少女を殺してしまった。
最近は俺たちは真面目に森で魔物を狩っていた。弱いから俺らでも困ることはなかったし、初めの方はストレス発散にもなって楽しかった。
でも毎日同じ事を続けていたせいで、少しずつストレスが溜まっていった。
そんな時に、少女に必死に集めた魔石を取られ、砂をかけられてついカッとなってしまって殺してしまった。
初めて人殺しをしてあのときは焦っていたし、昨日も焦っていた。今も本当に大丈夫なのか心配だ。でもこいつらの前では俺はリーダーなのだ。
「やっぱりリーダーは頭がいいっすね」
「そうだろ!俺は頭が良いからな」
「本当天才です」
「そうっす」
こいつらがいなかったら自首していたかもしれない。こいつらが俺をおだててくれて、いつも通りの笑顔を向けてくれるからいつものように振る舞える。
こんなことを俺様が考えてるのは少ししゃくだが、少しくらい仲間のことを頼っても良いだろう。
「それでリーダーこれからどうするんですか?」
「まあこの辺を探してみるか。面倒くさいがやらないとあのジジイになんて言われるか分からないからな」
「そうっすね。それに犯人を見つけたらシルバーにしてもらえのは嬉しいっすね」
「そうだな。あいつは俺らをチンピラ呼ばわりして、ブロンズの訓練期間を長くしやがったからな」
チンピラーズは更生のためにも他の冒険者よりも長くブロンズの弱い魔物狩りをやらされることになっていた。これもギルド長のロドリスが決めた。
「犯人見つけたらシルバーですね。そしたら強い魔物を倒してお金もゲットできますね」
この条件が出されて少しはやる気が上がった。
「そうっすね。ところでリーダー犯人の特徴とかって何でしたっけ」
「ああ、それはこの紙に書いてある。えっと、攫われた子供は黒いドレスを着ている小さな子供といた。その子達は町の外に出て行った恐れがあるだってよ」
懐から依頼について書いてあるぐちゃぐちゃの紙を出す。
「子供が犯人ってことっすか」
「いや、その子供はとても小さくまだ学校にも通っていないと思われるから、魔法を使えないはずだし、そんな犯罪計画を立てるとは思えねえ」
「さすがっすリーダー」
「リーダーの言うとおりです。子供がこんなことできるわけないです」
ボルは依頼の紙に書いてあることを言っただけである。
「だから犯人は子供を利用した大人だな。まあいい、とりあえずここら辺を歩いて探そうぜ。探してる振りさえすれば、今日のお金をもらえるんだから」
「そうっすね」
チンピラーズは森の手前にある膝下くらいまで伸びた草原を歩いた。
草原には人間の身長くらい大きな花があったり、花びらがとても大きなものがあったりと死角がかなりあった。
森まではどうやっても膝下まである草原を歩かなくてはいけない。ここは初心者冒険者のための訓練場のため、整備された道は用意されていない。
冒険者になったときは鬱陶しいと思っていたが、もう慣れた。
他の町までの道は整備されているらしいが、もちろん俺らのような初心者冒険者には護衛の依頼など来ないし、受けることもできない。
「ボスここに穴があるっす」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます