第3話 ハチと取引 ⑶

 まあ名前は良いか、今は仲間にできるかだな。


「ナミアゲハについては知ってるけど、他の種類は分からないから知ってることがあったら教えて」

「まずニホンミツバチは、手前のゾーンでは一番強いです。お、お尻あたりにある針を連続で2回くらい刺されると私たちはすぐに死にます。たまあに1回でも死ぬことがあります」

「連続で2回、すぐに死ぬ?ミツバチの針で?」

「そうですよ。私たちと違って強いです」

「こっちのニホンミツバチって猛毒を持ってたりするの?」

「それは分からないです」

「あと一回刺したら、ミツバチって死なないの?」

「え、死ぬわけ無いですよ。あっちが攻撃してるんですから」


 オルミーは不思議そうに抗議してきた。



『ミツバチは一度針を刺すと内臓ごとお腹からちぎれて死んでしまう。針は刺した後も相手の体から離れずにそこまで強くない毒を送り続ける。これを表すのが「ハチの一刺し」です。

 ミツバチには他の攻撃方法もあって、体をぶつける体当たり、たくさんのミツバチで相手を囲み、羽を羽ばたかせ熱を生み出し蒸し殺したりもする。その中は46度くらいまで上昇する』

『ハチに刺された後、1,2年のうちに再び刺されるとアナフィラキシーショックを起こすことがある。これは絶対に起こる物ではない。理由は略』



「相手の刺した針ってどうなるの?」

「どうもならないですよ。そのまま相手のお、お尻に付いたままです」

「というかなんか照れてない?顔赤くなってるよ」

「な、な、嘘ですよね。なってないですよね」

「うん、なってないけど、なってるよね。照れてるよね、どうしたの?さっきからお尻って言うときおかしくない」

「い、いや、そんなことないですよ。ギギ!ちょっといきなり触らないでよ、凜」

「もしかしてお尻触って欲しかったの?」

「ギギ!ちょっ、ギギ!はぁん、ギ!凜、そこは、ギギギ!」


 クロヤマアリの腹部(上から頭部、胸部、腹部の3つからアリは構成されている)はぷっくらと膨らんでいて少し毛が生えていて触り心地が良い。

 それになでるたびにオルミーが嬉しそうな声を上げるからいつまでも触っていたくなる。

 昨日まではお尻を触ってもこんなことはなかったはずだけどな……

 オルミーも中脚を私のお尻あたりに伸ばしてきた。少しギザギザするが昨日の夜と同じで安心する。感じないはずの体温も感じる。



 気づいたら昨日寝た状態になっていて、少しの間寝てしまっていた。意外と疲れが溜まってるのかもしれない。


「凜、そろそろ起きますよ」

「う、オルミー。私寝ちゃってた」

「疲れているのですよ。もう少し寝ますか」


 目の前にはオルミーの顔があった。もっとこの状況でいたいけど……


「いや、作戦会議を再開しよう。人間も警戒される前にあと数人捕まえないといけないし。やれることはやっておこう」


 それに人間を落とす感覚をもう一度味わいたいという気持ちもある。


「そ、そうですね。でも休息は大事なので今日も一緒に寝ましょうね」

「え、いいの!」

「それくらい良いですよ。凜は頑張っていますからね。それに、」

「何か言った?」

「何でも無いです。これは母性です」

「?」


 母性?いきなり何を言ってるのか理解できなかった。


「まあ良いですから、次はどの種族を仲間にするか決めましょう」

「そうだね。とりあえずニホンミツバチを仲間に誘ってみようか。ハチの巣がどこにあるか分かる?」

「分からないです。でも森をでてすぐの場所にある花のあたりにいれば見つけられると思いますよ」

「了解。案内アリさんまた借りても大丈夫?」

「大丈夫ですよ。他の働きアリにも凜の言うことを聞くように言っておいたので必要だったら協力してもらってください。あと私も行きましょうか。今日からしばらくは卵も産まなくていいですし」

「とりあえずは良いかな。必要になったら手伝って、オルミー」

「分かりました、凜。それじゃあ無事に帰ってきてくださいね」

「うん!最後にスベスベしても良い?」

「いいですよっていうか言う前にもうしてますよね」


 しばらくオルミーの体をほっぺスベスベしてエネルギーをチャージした。今日も頑張れそうだ。


「それじゃあ、いってくるね」

「いってらっしゃい、凜」



 縦穴のところには案内アリさんが待機していた。


「今日もよろしくね、案内アリさん。頭なでなで」

「ギギギ」


 いつも通り背中に乗り縦穴を登り、地上に出た。今日も木に日光が遮られていて薄暗い。


「森と草原の境界まで行ってくれる」

「ギギギ」


 もちろん乗りながら移動する。できるだけアリに触れていたいから。

 草原に近づくと明るくなってきた。


「草原に出ると人間に見つかるかもだから、ここら辺の木の裏でミツバチが来るのを待ってよう」

「ギギギ」

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