第2話 アリと住処 ⑿
凜は働きアリさんが部屋の端に置いてある死体を運ぶ、短い間オルミーの胸部にほっぺスリスリした。
「凜、そろそろ話を進めますよ」
「はーい、それじゃあどうする、オルミー?」
「え、なにも決めてないんですか?」
「魔物って自分の寿命が分かるんだよね?でも私オルミーの残りの寿命とか知らないから誰が食べるべきか分からないんだよ。まずオルミーって本当に最近魔石食べたの?」
「はい、本当ですよ、疑ってたんですか」
「だって初めのオルミー私のこと疑ってたし、寿命の話を避けていたし」
「まあそうですね。でも本当に私の寿命はあと半年はあるので子供達に食べてもらったほうが良いと思います」
「そうだね、それなら誰に?」
「みんなで平等に食べれば良いのではないですか」
「え、それで良いの?なんか人間の心臓を食べないといけないとかじゃないの?」
魔物の魔石を食べないと寿命が延びないらしいから、てっきり人間の特定の部位を食べないといけないのではと思っていた。
「そうなんですか?人間を食べる機会が今までなかったので分からないですね」
「え、いや、私も全然分からない。まあとりあえず働きアリさん達全員に少しずつ人間をわけてみよう。失敗しても同じ手順で人間をゲットできるでしょ。まだ警戒もされてないと思うし」
「無駄にはできないですけど、何も分からないのでそうするしかないですね」
「じゃあ早速分けようか!」
私とオルミーの前には二つの小さな人間の死体が置いてある。
やっぱり心は痛まない。むしろテンションが上がる。復讐をやり遂げたようだ。
まだやりきってはないんだけど。
相手が子供とかはまったく関係ない。私にとっては人間というひとくくりでしかない。
「オルミー刃物とかってないよね?」
「ないです。別にそれぞれがかじって食べれば問題ないですよ」
「そうだね」
無意識のうちに私はこの人間を切り刻もうとしていたようだ。
「それじゃあ、働きアリさん達この人間を食べて良いよ」
「ギギギ、女王様私たちが本当に食べて良いんですか?」
「私たちは働きアリ、女王のために働く」
「「ギギギ」」
このアリたちは卵から生まれた瞬間から働くため、女王アリの命令を聞くことだけがプログラムされている。それでも案内アリさんのように女王を思う感情を持っている。全員、操り人形ではなく、自我を持っている。ただその自我が弱いだけ、生きる時間が短いから。そうじゃないと生きていけないから。
「私の子供達、これからは私のためではなく、あなた達も含めた私たちのために協力してください!」
この働きアリさんたちは、これからもっとたくさんの感情を持つことになるだろう。そんな未来を考えると楽しみでしょうがない。
「「ギギギ」」
働きアリたちは動かない人間の子供をグチャグシャと音を立て骨や爪、髪以外を食べていく。その中には案内アリさんもいた。
地球の小さなアリたちがほかの昆虫の死骸に群がって食べるのは何度も見たことがあったが、この大きさのアリが人間を食べる様子は肉食動物がより大きな生き物を狩って喰らってる様な迫力があった。
「フッフフ」
それに狩られてるのが人間だと思うと気分が良かった。
「大丈夫、凜。やっぱり人間の子を食べるのは、凜にとって、」
「私は大丈夫、オルミー。興奮してるだけ、私はこれを見たかった」
テンションが上がっていた。これはアニメでは無く現実で、アニメのように人間側が勝つようにしなくてもいいのだから。魔物が悪者だという概念にとらわれなくていい、魔物が正義、人間が悪者という構図でも良いのだから。
私はこれが見たかった。いつもアニメでは逆だった。
「そう、それならいいですけど」
「うん!」
オルミーに抱きついた。
アリは無セキツイ動物で変温動物だから外部の温度により体温が変化するから、人間のように温かいわけではない。
でもオルミーは温かかった。人間の冷たさ、冷徹さとは比べものにならなほど温かい。
やっぱりこっちが正義なのだ。
「ギギギ、食べ終わりました、女王様」
「「ギギギ」」
なんか私の方を睨んでる気がした。
「それでどれくらいの寿命が延びたの?」
「私は一ヶ月くらい寿命が延びました」
「私もです」「私も」
30匹全ての働きアリ達は寿命が1ヶ月延びたようだった。
「ふぅー、良かった。それじゃあ改めてよろしくね、働きアリさん」
一安心した。これでダメなら、寿命が今日のアリさんは救うことができなかっただろうから。
私は小さな一歩を踏み出すことができた安堵感に包まれた。
「「ギギギ」」
「子供達、凜とも仲良くやるのですよ!」
「「了解、女王様」」
「あと……私のことはオルミーと呼んでください」
「「了解、オルミー様」」
少し働きアリ達には嫌われてる気もしないがクロヤマアリの群れと協力関係、仲間になることに成功した。そして拠点、住処も手に入れた。
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