第21話 形勢逆転
片桐は暗闇に溶け込むように静かに動きながら、黒田の行動を監視する日々を送っていた。彼はかつての友人や知人の助けを借りて、黒田の情報を入手し続けた。黒田がどこにいるか、誰と会っているか、何をしているかを知ることで、復讐の機会をうかがっていた。
ある晩、片桐は黒田がよく出入りするバーを見つけ、そこに潜伏することに決めた。そのバーの警備は緩そうで、片桐にとっては絶好の機会だった。薄暗い店内、片桐は一人の男と一緒にくつろぐ黒田を見つけた。彼は楽しそうに笑い、周囲の人々と談笑している。片桐の心臓が高鳴った。
「今だ…」片桐は心の中で呟き、落ち着きを保つよう努力した。彼は静かに席を離れ、黒田の近くへと近寄っていった。
しかし、冷静さを保っているつもりの片桐だったが、黒田の笑顔を見ると怒りがこみ上げてきた。彼の弟を奪った男が、今こうして無邪気に楽しんでいる。その瞬間、片桐は自分の心の奥に潜む復讐心と対峙した。
「もう一歩踏み込んで、こいつをつかまえてやる…」片桐は決意を固めた。
やがて黒田が席を立ち、トイレに向かう方向に歩き出した。一瞬の隙をつくため、片桐は素早く尾行を始めた。静かに、音を立てずに彼を追いかける片桐。トイレのドアが閉まる音が聞こえた瞬間、片桐は心の中で時間を計った。
「今だ!」片桐はドアを開け、黒田が個室に入った瞬間を狙って飛び込んだ。扉の陰から姿を現した彼は、急に動いた黒田を捉え、力強く押し込んだ。
「片桐!?」黒田は驚き、明らかに動揺している。だが、片桐にはもう後戻りはできなかった。彼の心の中の復讐が、もはや理性を上回っていた。
「お前のせいで、俺の人生は狂った!一度でもこの苦痛を味わったことがあるのか!」片桐は詰め寄った。二人の間に緊迫した空気が流れた。
黒田は自分の状況に焦りながらも、冷静さを保とうとしている。「片桐、落ち着け。話をしよう。お前の気持ちは分かるが、冷静に…」
「冷静だって?お前がどんなに簡単に言葉を操っても、俺の痛みは消えない!」片桐は言い放ち、周囲の音が消えたかのように感じた。彼は黒田を押し込む力を強めた。
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