第17話 譲れない想いと見つめる未来

夕暮れのグラウンドに立つ陽介は、少し離れた場所で翔の姿を見つけた。夕日のオレンジが翔の髪を照らし、その姿がどこか特別なものに見える。自分にとって翔は、どんなときでも心を温めてくれる存在だった。


(やっぱり、翔は特別だ…)


告白してから、陽介は気持ちの整理がつかずにいた。翔が自分に返事をくれるのか、それとも、答えを避けようとしているのか。その不安は、日に日に大きくなっていた。


仁と翔が楽しそうに話している姿を見かけた時を思い出す。仁がふいに翔の髪を指でつまんで軽く笑う。その仕草に翔が少し照れくさそうに笑い返す。自然なやり取りに、二人の関係性が浮き彫りになったように感じられた。


(…すごく似合ってる)


陽介は胸が締めつけられるような感覚を覚えた。翔の笑顔を見るのは好きだった。それが自分に向けられたものであれば、どれだけ嬉しいかと思う。しかし、仁といるときの翔は、自分が見たことのないような輝きを放っている気がした。


(あいつの方が…翔を幸せにできるんじゃないか)


その考えが頭をよぎるたびに、陽介の中で湧き上がるのは悔しさと、自分への情けなさだった。


そんな思いを抱えたまま迎えた夕方、翔が陽介を呼び出してきた。


「陽介、話があるんだ」


真剣な表情で切り出された言葉に、陽介はどこか予感めいたものを感じながら頷いた。翔は一瞬言葉に詰まりながらも、少しずつ自分の気持ちを伝え始めた。


「俺、陽介の気持ちは本当に嬉しい。でも、俺が惹かれてるのは仁なんだと思う」


やっぱり、そうか――陽介はその言葉に動揺しなかった。むしろ、自分が感じていた予感が正しかったことに、どこか納得すら覚えた。


「…そっか。正直に言ってくれて、ありがとう」


陽介は少し苦笑いを浮かべながら、静かに答えた。心の奥底では痛みがじんわりと広がっていたが、翔の素直な言葉が嬉しくもあった。


翔が遠くに去ったあと、陽介は一人グラウンドに立ち尽くしていた。仁と翔の二人が、どれだけ特別な関係を築いていくのかを想像すると、自分がその中に入る余地はないと感じていた。


(でも…やっぱり諦めきれない)


陽介は、いつか翔に振り向いてもらえる日が来るのではないか――そんな淡い希望を抱きながらも、自分の中にある複雑な感情を噛みしめていた。

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オフショット らいおん @rai033

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