第16話 誤解
最近、陽介が自分を避けていることが気になっていた翔は、ようやくその理由に思い至った。もしかして、自分が告白の返事をしていないから、陽介は距離を置くようになっているのではないか――そう考えると、なんとなく辻褄が合う気がした。
(やっぱりちゃんと返事しないと…陽介に失礼だよな)
放課後、翔は陽介を探し、しっかりと返事を伝えようと決意を固めた。しかし、廊下で陽介を見つけた瞬間、仁が先に陽介の方に歩み寄っていくのを見て、翔は少し離れた場所から二人のやり取りを見守ることにした。
「おい、最近どうしたんだ?なんで翔を避けてる?」
仁が陽介に向かって真っ直ぐに問いかけると、陽介は少し戸惑いながらも、しばらくしてぽつりと口を開いた。
「…だって、二人は付き合ってるんだろう?」
その言葉に、仁は驚いた表情を浮かべ、すぐさま否定した。「いや、俺たちはそういう関係じゃない」
だが、陽介は少し悔しそうに眉を寄せ、「でも、俺は見たんだ。あの日、街でお前らが手を繋いで歩いてたのを」と静かに言い返した。その言葉には、翔への特別な想いが滲んでいた。
陽介の言葉を聞いた瞬間、翔は思わず会話に割り込み、「あれは撮影してただけなんだ!」と声を上げた。自分でも驚くほど大きな声で、二人の間に立ちすくむ。
「撮影の一環で、あの日は街でデートみたいに見える写真を撮ろうって…そういう、仕事だったんだ」
翔の言葉に、陽介も仁も驚いたように沈黙し、やがて陽介は少し顔を伏せて「そっか…」とつぶやいた。その瞳には、ホッとしたような、しかし複雑な感情が見え隠れしていた。
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