第12話 写真集

陽介からの告白以来、翔は自分の気持ちをどう整理すればいいのか分からずにいた。仁とも以前のような自然な関係に戻れず、ぎこちない日々が続いている。


そんなある日、放課後に仁のマネージャーである香織が翔を呼び止めた。


「翔くん、ちょっと話があるの。少しだけいいかしら?」


香織は真剣な表情で切り出した。二人が座ると、香織は静かに話を始めた。


「実はね、翔くんが撮った仁の写真がSNSで大反響で、彼のファンの間でも話題になってるの。だから、仁の写真集を作ろうって話が出てるのよ」


突然の提案に、翔は驚いた。自分が仁の写真集を任されるかもしれない――それは憧れでもある一方で、今の自分の心境を考えると、簡単に引き受けられるものでもなかった。


「すごい話でしょ?それでね…仁くんがどうしても翔くんに撮ってほしいって強く言ってるの」


香織の言葉に、翔は内心で驚きつつも、ぎこちない関係のまま、仁をカメラに収めることへの不安が押し寄せてきた。


その夜、翔の家に仁が訪ねてきた。香織から翔の迷いを聞き、どうしても直接説得したいという強い気持ちを抱いてやってきたのだ。


「翔、写真集の話聞いてるよな。俺、どうしてもお前に撮ってほしいんだ」


仁の真っ直ぐな眼差しに、翔は少し圧倒されながらも黙って聞き続けた。


「俺のことをこんな風に撮れるのはお前だけだ。カメラ越しに俺を見てる時のお前は…なんか、特別なんだよ。だから、お願いだ、翔」


仁の真剣な言葉が、まっすぐに翔の胸に響いた。お互いの距離にぎこちなさが生まれてから、こんなに率直に気持ちをぶつけられたのは久しぶりで、翔は少し戸惑いながらも、その想いに心を動かされた。


しばらくの沈黙のあと、翔はそっと頷いた。


「…わかった。俺、やってみるよ」


仁の顔に安堵の色が浮かび、二人の間に漂っていたぎこちなさが少しずつ消えていくのを感じた。こうして、翔は写真集の撮影を引き受けることを決意し、再び仁をカメラに収める日々が始まろうとしていた。

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