第9話 勉強会
テストが近づき、少し焦り始めた翔は、勉強にあまり自信がない自分にとって頼れる存在の幼なじみ、陽介に相談することにした。
「陽介、今度のテストなんだけど、俺に勉強を教えてくれないか?」
翔が頼むと、陽介は快く引き受けてくれた。「もちろん、家で一緒に勉強しようぜ!」という陽介の返事に、翔はほっとした気持ちで、その日の放課後の勉強会を楽しみにしていた。
放課後になり、翔がいつも通り教室で準備をしていると、仁がふと彼に声をかけてきた。
「翔、この後の撮影、また見に来ないか?」
仁の誘いに、翔は少し申し訳なさそうに笑って答えた。「誘ってくれてありがとう、でも、今日陽介の家で勉強を教えてもらう約束してて…」
その言葉を聞いた仁は、何も言わず一瞬だけ視線を逸らした。その表情には、ほんの少し寂しさが滲んでいるのを、翔は気づかなかった。
「そっか。」仁は小さく頷き、あくまで自然を装った表情で続けた。「じゃあ…俺も、今度は勉強を教えるよ。君が困ってるなら、俺にも頼ってくれ。」
翔は意外な提案に驚きながら、「本当?ありがとう!」と少し照れくさそうに微笑んだ。仁も小さく微笑み返したが、その胸の奥には陽介への静かな嫉妬が渦巻いていた。
その日の夕方、翔は陽介の家に到着し、テキストを広げながら雑談をしていた。会話の中でふと、翔は今日の放課後に仁と話したことを思い出し、ぽつりと伝えた。
「そういえば、仁も勉強を教えるって言ってくれたんだ。」
その言葉を聞いた陽介は一瞬、何とも言えない表情を浮かべた。少し残念そうで、どこか複雑な感情がにじんでいるようだった。微妙に目線を外し、口元には無理に作ったような笑顔が浮かんでいる。
「そっか…仁もか。なんか、あいつらしいな。」
陽介の声はいつも通りのトーンだったが、その表情は明らかにどこか寂しげだった。翔にはそれが何を意味するのか、すぐにはわからなかったが、陽介の少し沈んだ雰囲気に気づき、何かを言い足そうと口を開いた。
だが、陽介はふっと顔を上げ、いつもの明るい笑顔に戻って言った。「じゃあ、俺が先に教えた分、いい点数取らせてやるからな!」
翔もその言葉に安心し、二人は気持ちを切り替えるように勉強に戻った。
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