第4話 波音とシャッター音
夏休みも半ばに差し掛かる頃、翔は写真部から写真コンテストへの出展を依頼されていた。しかし、締め切りが迫る中、なかなか満足のいくアイデアが浮かばない。ふと頭に浮かんだのは、普段から撮影している仁の姿だった。SNSでも好評な仁の写真が、翔にとっても特別な存在になっていることを感じていた。
思い切って仁に相談すると、彼は少し驚きつつも快く引き受けてくれた。「せっかくだから、ちょっと特別な場所で撮られたいな」と仁が提案した場所――それは、まだ二人で行ったことのない海だった。
翌朝、二人は電車に揺られて海へ向かった。初めて訪れる海岸には、白い砂浜と青い空が広がり、爽やかな潮風が吹き抜けている。海を見た瞬間、仁は少し嬉しそうに微笑みながら、砂浜に立った。
「こういう場所で撮られるの、なんか新鮮だな。」
翔はそんな仁を見つめながら、思わずシャッターを構える。日差しを浴びる彼の姿は、雑誌で見るどの写真よりも自然で、どこか無防備だった。
(…すごく、海が似合う…)
いつもクールな彼が、自然体でリラックスした表情を浮かべているのが新鮮で、翔の胸は自然と高鳴る。ファインダー越しに、日差しに照らされる仁の姿を見つめていると、心臓がドキドキしてくるのが自分でもわかった。
「仁、そのままでいい?…すごく、綺麗だから。」
思わず口をついた言葉に、翔は自分でも驚きつつ、すぐにシャッターを切った。仁は少し照れたように笑い、「ああ、わかった」と返すと、さらに自然体な表情を見せた。
翔は胸の高鳴りを抑えながら、ファインダー越しに仁を見つめ続けた。いつもとは違う、どこか儚げで柔らかなその横顔――この瞬間をどうしても写真に残しておきたい、という気持ちで、翔は夢中でシャッターを切り続けた。
撮影を終えた後、二人は砂浜に腰を下ろし、波の音を聞きながら話し始めた。翔は仁の隣で、さっきまで自分が感じていたドキドキがまだ収まらないことに気づいていた。
「いつも、仁を撮ってると不思議な感じがするんだ。特別な時間が流れてるみたいで。」
翔が小さくつぶやくと、仁は少し驚いた表情を浮かべて、やがて照れくさそうに微笑んだ。
「俺も、翔に撮られると自然体でいられるから、安心するのかもな。普段の俺なんか、君にしか見せてない気がするし。」
仁の言葉に、翔はまた胸が高鳴るのを感じた。彼が自分を特別な存在と感じてくれていることが、嬉しくてたまらなかった。
「仁を撮れて、本当に良かった。」
翔は、波の音に包まれながら、仁への特別な想いが少しずつ膨らんでいくのを感じた。
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