第2話 ファインダー越しの距離

仁を撮り始めた翔は、放課後や昼休みなど、ふとした瞬間にカメラを向けるようになった。クラスメイトたちは気づかない、モデルとしての仁とは違う、普段の彼の素顔を撮影することに、翔は次第に夢中になっていった。


ある日、昼休みに教室で仁の様子を撮っていると、仁がふと顔を上げ、翔に向かって小さく微笑んだ。


「お前、いつも俺を見てるよな。」

翔はドキリとし、慌ててカメラを下ろす。「あ、ごめん…なんか、気になってつい。」


仁は微笑んだまま肩をすくめ、「いや、いいんだけどさ。俺もこんな風に撮られるのは初めてだから、ちょっと面白いって思ってる。」


その言葉に翔はほっとし、再びカメラを構えた。レンズ越しに見る仁は、いつものクールな表情ではなく、どこかリラックスしていて、まるで友人に見せる自然体の姿だった。


「仁って、やっぱり雑誌で見るよりこういう感じの方が似合うかもな。」

思わず口に出した翔の言葉に、仁は少し驚いたように目を見開いた。


「そう思うか?」

「うん、なんか…本当の君って感じがする。モデルの仁とは、違う一面があるんだなって思って。」


仁は照れくさそうに顔をそらし、「お前って、結構はっきり言うんだな。」と小さく笑った。


数日後、翔は撮りためた仁の写真を整理しながら、ふと思いつきでSNSにいくつかの写真を投稿した。仁の了承も得て、クラスメイトにも見せたら喜んでもらえるかもしれないと思ったからだ。


投稿はすぐに反響を呼び、驚くほど多くの「いいね」やコメントが寄せられた。「普段の仁って、こんな風なんだ!」「モデルの時より自然でカッコいい!」といった反応が次々と集まり、クラスメイトたちの間でも話題になった。


その日の放課後、翔は仁にその反響を報告した。


「すごい反応だよ、みんな仁の普段の姿がカッコいいって言ってる。」

「へぇ、そうか。」仁は一見無関心そうに見えたが、どこか嬉しそうに見える。


「それにしても、お前が撮る俺ってそんなに面白いのか?」

「うん。俺も気に入ってるよ。仁の自然な姿が撮れて、すごく楽しいんだ。」


仁は少し照れたように翔に目を向け、「お前がそう思うなら、それでいいかもな。」と言って、笑った。


翔と仁の撮影はそれからも続き、SNSでの反響も徐々に増えていった。日常の中でお互いを知り、理解していく二人にとって、ファインダー越しの時間は特別なものになりつつあった。

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