第4編 午前2時

1 午前2時


夜が更けて、しかし冴える悪魔の時。差し支える明日の自分、罪悪感の今日の自分。無垢で無邪気な前の自分。移り空る自分たち、くるくる惑う万華鏡。



2 日記帳


積み上げられた記憶の山。手に取ると、その軽さに込み上げる、自分に対するふがいなさ。決意新たに山高く。



3 剃刀


後悔の赤染、手のひら、頬に口。振りかけるアルコールの刺激すら心に何もたまらない。ふと見る鏡に映るのは悲劇と喜劇の立体交差。



4 籠の鳥


しきりに声を上げる鳥。たまにはいいかと部屋へと放ち、思い描いた絆の形。願う世界は矮小で、全てを手放す鏡となる。



5 感情の先


想いが殺がれたその瞬間、心は一気に冷えていく。一人一人の持つ価値は一致するなどありはしない。熱は力へ切り替わり巻き上げられる二対の錨。



6 流れる雲


曇天の空を見上げて憂う時。切れ目に見えるは濃く濃く灰で、形も崩れず流れを見える。握りしめるプリントと漂白された体操着。



7 CD


飛び乗った後部座先で取り出した、プラスティックのパッケージ。虹の縁が紡いだ世界、飲み込まれていき、今始まる。



8 こしひかり


LED眩く光り目がかすむ。照らされた床はさらに白くあり。白い棚、普段なら黒ずむことなどありはしない。ぽっかりと開いた穴が影作る。



9 風鈴


一目ぼれ、思いついて買ってきた。カーテンレールにぶら下げて音色に心を癒そうと。閉じた窓、離れたエアコン、風はどこ?



10 クリームパン


一口かじると顔を出す黄色く目立つ主人公。そのまま進みたいところ。味気のなさが締めていき余韻が二個目を引き寄せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る