第3編 木の葉
1 スノードーム
ちらちらと降っては止む粉雪が、風に吹かれて舞い踊る。手のひらに落ちた結晶は雫となってこぼれてく。見上げてもそこには乾いた空気だけ。
2 鉛筆削り
回すほど、生まれる幾何学、アラベスク。最近どうも調子が悪く粉みじんの塵ばかり。とぐろを巻いた蛇もなし。
3 フイルムカメラ
取り終えたカメラの背を開け取り出した、黒く巻かれたフイルムを覗き込みたい好奇心。耐えないとすべてが台無し観光地。
4 デジタルカメラ
電池切れ。電池切れ。昨日の自分に恨み呪い。かくなる上はと二つ折り。今は笑い話とスマホのみ。それでもファイルフォルダの奥底で時折私を癒してる。
5 イヤホン無音
耳に付けたイヤホンは無音、静かな壊れ物。うんともすんとも言わなくて友達相手に押し付ける。友の鼓膜を揺らす音、曲をただただ夢想する。
6 オーバードーズ
苦しんで、ずっと、ずっと、苦しんで白粒多量に鷲掴み。藁にも縋るこの思い。一気に口へと流し込みかみ砕くと幸福感。遠のく私の痩せたボディ。
7 踊り食い
たまたま空いてたファミレスで、ランチを楽しむ昼下がり。客がどんどん増えてきてテーブル離れてカウンター、2席ずらすカウンター、見知らぬ人と対面食。
8 電波時計
つまらないもの→電波時計。時刻を合わせる手間はなし。刻み込まれる時間の槍。休憩を伸ばす魔法は枯渇して、瀕死のゾンビが群れを成す。
9 木の葉
残暑厳しい昼下がり、街で見かけた黒スーツ。ネクタイ締めて上着は第二ボタンまで、汗の一つもかいていない。つけた先の曲がり角、木の葉が一枚ひらりひら。
10 角砂糖
子供の頃の宝物。瓶に詰まった白い小箱。一つ取り出し眺めても開け口どこにも見当たらない。口に含むと鍵開き、溢れる3時の夢心地。
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