第5話 首席入学者
首席入学を狙った理由の1つは、王子と主人公の出会いのきっかけを無くすため。
あともう1つ。
『新入生代表 メリア・パプリコット』
学園長から壇上に呼ばれメリアは席から立つ。
「頑張っておいで」
アレクシスに言われるまでもない、この挨拶こそメリアが死ぬほど勉強して勝ち得た目的なのだから。
「皆さま、御機嫌よう」
初手は貴族令嬢らしく優雅な挨拶を、
「メリア・パプリコットにございます。この良き日に〜」
ザ日本人な定型文を間に挟みまして、
「私はこの学園に通うにあたり、是非とも皆さまにお伝えしたいことがございます」
メリアはスっと息を吸い、
『清く、正しく、美しく』
ふぐっと息を飲み涙目で壇上を見上げているピンク髪は無視して続ける。
「我々学生の本分を忘れてはなりません。この学園に入学した理由はございますか?私は『この先の人生を生き抜く術を学ぶため』入学致しました。青春を謳歌すること、様々な人と関わることで学ぶことは多くあることでしょう」
アレクシスの目が爛々と輝いて見えるのは見間違いであってほしい。
ちなみに手で隠れている口元には、人の悪い笑みを浮かべていることだけは確かだ。
「そこで忘れてはならない言葉が先程あげた『清く正しく美しく』です!私たちはまだ未熟で何か問題を起こしたとて、責任を取れる年齢ではありません。必ず身近な誰かに迷惑を掛け、大切な誰かを傷つけることになる。ひいては卒業してから、5年10年さらに先の自分の人生さえ後悔に苛まれる結果をもたらしかねません。犯罪や狂乱に耽る行為を学友である皆さまがするとは思ってはおりません」
バンッと教壇に手を付くメリアに視線が集まる。
「しかし浅慮からしてしまった、罪に問われぬような行為はどうでしょう。例えば我々貴族生徒の中には、既に婚約者がいる方もおりましょう。その大半の方が卒業後、その方と一緒になることと思います。先程伝えました言葉、それをその方に誓って頂けますか?軽い気持ちで貴族に有るまじき行いをした、それを婚約者の方に見せれますか?将来を誓いあえますか?」
メリアは胸元で手を組み、切なげな表情を浮かべた。
元が華奢で色白なだけに、それは薄幸な美少女に見えた。
「そこで…」
(そこで!?)
大衆の多くは頭に「?」が浮かんだことだろう。
「『風紀委員』を設立することになりました」
ふぅふぅ息苦しそうに喘ぐリリカル頭をさらに無視する。
「学園規範の裁定をされたオルト教授を顧問とし、各学科から自選他薦は問わず広く委員を求め、風紀の遵守や推進を目的とする委員会を設けることとなりました」
するとメリアの後方に映像が映し出される。
「教養学科から私が自選にて入らせて頂きます」
教養学科とは主に貴族令嬢として歴史やマナーなどを中心に学ぶ、現代で言うところの家政科のような感じだ。
後方に説明が細かく表示されていく。
「文官学科、騎士学科、魔術学科の各学科から最低1名募集致します」
文官学科は官を排出する家門出や、女性官を目指す生徒も在籍しているため、学園でも1番生徒数が多い学科だ。
尚、アレクシスはこの学科に在籍している。
騎士学科と魔術学科は実技が主となる。騎士学科もだいたいが騎士を輩出してきた名家出身者だ。
生徒数は魔術学科が最も少ないが、卒業後は魔術師団への入団が約束されてるも同然の学科だ。
「自選者がいない場合は学科から1名選出して頂きます。 風紀を取り締まるに、人は幾らいても良い事と思いますので我こそはと思われる方の入会は拒否致しません。また会をまとめあげる会長は、委員の中から投票で決めますので、委員会に参加されない方も是非投票にはご参加ください」
何故だろう、見た目は庇護欲をそそらせられそうな令嬢なのに、有無を言わさぬ威圧を感じるのは…と思う新入生多数。
「皆さま良き学園生活を送っていきましょう」
締めに満面の笑みを浮かべるメリア・パプリコット侯爵令嬢がいた。
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