第1章7話「魔法と特別な力②」
ペルシダと紫花菜の狂暴化。ペルシダを刺し殺そうとし、流河は紫花菜に傷を入れられた。
そして大翔がいった世界が敵になるという言葉。
流河は水を飲んで一度心を落ち着かせた。
紫花菜をベッドに寝かせ、流河、大翔、ペルシダ、アスハがテーブルに着いた。
世界を敵に回すなんて、空想の話ぐらいしかない話だ
でも実際アスハと紫花菜の様子がおかしかった。何かしらあるのはまちがいないだろう。
まず大翔が、世界が敵だということを説明することになった。
「まず、ペルシダさんが触れられた時音がなったでしょ。あれでおそらく何かしらの洗脳が打ち消したんだと思う」
「俺はそんな音きいていなかったぞ?」
「兄貴はペルシダさんと一緒に寝ていたから気が付かない間に解除されたんでしょ」
「寝てる間?」
「そんなイメージ抱かれると、心が傷づくなぁー」
「アスハちゃん、心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ。流河はものすごく誠実だから」
「え?」
「いい、いい!! もういい!! 話が脱線するから!!」
アスハがペルシダの体を心配そうに見ている。アスハはその後自分が何をしたか聞いて、ペルシダに私を殴ってくれと言ったが、当の本人は
「別にいいの。アスハちゃんのせいじゃないから」
と笑って許してくれたせいか、アスハは紫花菜と同じような目でペルシダを見ていた。
「まあ、兄貴が何野郎かは置いといて。これを見て」
大翔が出したのは、さっきのアスハや紫花菜の動画や写真だった。そして目の部分をズームする。
「この黒いもやもやみたいなのが見える? 多分これが、命令の遂行された時に出てくるんだと思う。街中での人はみなかったしね」
確かにアスハの目は今の目と全然違う。それに紫花菜もそんな目をしていた気がする。
気のせいなんて言えない。ペルシダがこの世界に来た。確実に違うと言い切れない。
「それで、これは15年くらい前にあった世界が変わった日の映像」
流河が誠実かどうかという議論の間に大翔はタブレットを使って見つけた映像。
机において、みんなに見やすいようにする。
ペルシダが「へ?なにこれ?どうなってるの? これもテレビなの?」と、タブレットに驚いている。正直その可愛い感想はもっと聞いておきたいが今回は見送りするしかない。
「今日をもって、国際連合は解散となります。私達は連合より強固な団結を、助け合いをしなければなりません」
演説台に立っているのは一人の大人だ。
その演説代を囲んでいるのは大人たちだ。中国。アメリカ。ロシア。他にも200近くの国の旗が円になっている。確かこの人は宣言した人で有名な人だ。
歴史に興味ない自分でも覚えている。
「この日を持って、全ての国は吸収され地球連邦、全ての資源、領土、空すら共有することができるのです。皆に恒久的な平和を得られることになるでしょう!!」
その目は黒いもやもやが光をとざしていた。演説台に乗っている人だけではない。テレビに映っている人全員の目がおかしかった。
アスハと紫花菜、さっき様子がおかしかったときの目と全て同じ色をしている。
「おかしいと思ったんだ。国の終わりなのに、選挙はない。解散の決議もなかった。でもそこで止まっていた。考えるように組み込まれたのか…わからないけど、それが本当なら………」
言葉がでなかった。それはアスハもだ。
洗脳。ちょっと前なら「何言ってんだよ」と、流していたかもしれない。
でも実際それを見て、ペルシダを見て簡単に否定できなかった。
その間に大翔はペルシダに質問する。
「それで、洗脳や記憶操作類の力…魔法とかあるんですか? 僕達の世界は魔法がないんです。それにどれくらい効果があるのかも分からなくて」
「ええ、あるわよ。私もよく知らないんだけど、海外では流行っているらしいね。でも、普通は触れただけでは治らないはずだし、私も解除の魔法なんてしらないよ?」
「それは、分からないですね……でも物語の世界に異世界転生や転移というのがあるんです。その転生者や転移者には何かしらの能力が貰える。空想上のことだけど、実際異世界転生ってのがあるなら、もしかしたらペルシダさんも何か貰っているのかもしれないですね」
「そうなの? そうかもしれないわね…」
そう言ってペルシダは手をぎゅっと握りしめたり離したりした。
確証はないのだが、そうじゃないと否定する材料もない。
特別な力。異世界転生した時にもらえる特別な力。
正直漫画好きな流河には気になる話だが、そんなことどうでも良くなってしまった。
「お前はどう思ってんだ?」
「ん?」
「地球連邦が………それに一般人までも洗脳の対象ということは少なくとも70億はくだらないぞ」
「え?70億?そんなにいるの?」
ペルシダが目を見開いて驚いた。そんな驚いた顔も見ることが出来ず、大翔を見る。
「どうしてそんなに冷静にいられるんだ?」
大翔は極めて冷静だった。いつもと変わらないように見える。それが説明に信ぴょう性を持たせてくれない。普通はもっと真剣に張り詰めた顔をするのではないだろうか。
本当は嘘なんじゃないかと思わせる。
「考えることがありすぎるからね。僕もキャパオーバーだよ。でも考えないと、行動しないといけないから、頑張らないと………」
大翔は真剣だ。アスハもペルシダも少し信じられないのか大懐疑的な目で見ている。
それは自分も同じだ。
大翔は確信をもって行動しようとしている。対してまだ信じられない自分達。
なのに大翔はその考えに疑念を持たずそれに基づいて行動している。
「そうだとして、俺はこのままの方がいいと思うが。別に行動を起こさなくてもよくないか?」
確かに世界全体を洗脳した可能性があるかもしれない。でも、生活は変わらない。別にだれが支配者になろうが、変わらないのだ。
「いや、多分、魔王が一年ごとに洗脳するはずだ。そしたら、僕や兄貴は大丈夫だけど、紫花菜やアスハが洗脳される。一度解除したからそれは避けたい」
「え?魔王? 毎年?」
確かに洗脳をされる可能性があって、それを危惧しないことは行けないと思う。そこについては考えるべきところだ。
しかし、毎年?魔王?
「さっきアスハが言っていたんだ。魔王様って」
そんなこと言っていた気がする。多分動画を見返せば見れると思う。
大翔は冷静にそうやって反論できない事を並べてくる。
心が本当にそうなんじゃないかと思わせる。
「それは気になるけど…。でも毎年ってのは?」
「毎年というのは、この人たちが宣言したとき、僕たちはいなかったしね。でも洗脳をかけてきたから早くとこなにか、案を………」
「ちょっと待て、さすがに飛躍しすぎじゃないか?」
思わず止めてしまった。
そう大翔の考えが飛躍しすぎていないか分からない。
大翔についていけない。
70億もの人が敵になると言われたからだ。
異世界転生があったこと。魔王がだいぶ前に転生してきて、世界を洗脳して70億の人が洗脳状態だと。
これだけの情報をたった6時間で全部現実だとそう思えない。
信じられない。余りにも現実味がない。
例えそれが真実だとしても、それを真実だと認められない。
「それに魔法を解かれたことを相手が知っているかどうか分からない。時間が遅いほど相手の思うつぼになる。今まさに動いているかもしれないから対策は施しておくべきだ」
「そんなことあるわけ……」
「分からないよ」
突然声が変わった気がする。大翔の方を見ると下を向いていた。みんなも大翔の方を向いていた。
「分からないさ。どういう魔法を使ったのか。なぜこの世界に魔王と名乗るものが来たのか。なにが正しいのか分からない。でも少なくとも言えることがある」
「何が起きるか分からないってこと。落雷や地震で死ぬ確率だって低いよ。でもゼロじゃない。誰かが死んでいるから計算される。この魔法だってそうだ。もし魔法がこの世界に来たことで効果が変わっていたら? もしペルシダさんと同じように能力を貰っていて、またペルシダさんと知っている魔法と別の能力を持っていたら? 兄貴はそれがちゃんと分かる? 僕には分からない。ただ分かるのは、何か起きるのはいつも突然だってこと。突然異世界転生してきたり、突然人は死に、突然加害者になったりするってことだ」
その言葉の重みにと目を合わせることが出来ず思わず目を下に向ける。それは恐らくアスハも同じだろう。ペルシダだけが何が起きているのか分からない。みんなの方に顔を向けた。
言い返せなかった。大翔は恐れているのだ。
だから必死になって考えている。
それを飛躍だというのは失礼だと思った。
例え全て考えすぎだとしても、流河だけは大翔に傍にいないといけない。
沈黙が続いた。大翔は慌てて取り繕って
「…ごめん。後言い忘れたことがあったんだ。異世界から来た人はほかにもいて、多分魔王の命を狙っていると思う」
「それは、どういうことなんだ?」
「異世界の人を殺すとかなんて、そんなこと異世界からの人に狙われている以外何もないでしょ」
「それはそうだが………どうやって探すんだ?」
「それは分からないね…」
大翔はそこで黙る。無理もないだろう。同じく何も思い浮かばない。
一人で考えるなと言ってしまったが、話の内容に大翔に迷惑をかける形となってしまった。
「う~ん、それはまた考えることにしようか。とりあえず昼ご飯を食べてそこから考えよう」
とそれでしまいとなった。皆何か会話することなかった。アスハはあの映像を見返しているし、ペルシダは宙に目線を浮かべている。
思わず頭を抱えそうになった。頭をがりがりするにとどめる。世界が支配されているなんて。
これからどうなるのだろうか。
正直未知すぎて、一緒に考えることも出来なかった。
ただそれだけの感想しかなかった。
今はとにかく一旦落ち着いて、そこから考えようと。
まだ軽く考えていれるとそう思った。
「大翔」
「何?」
「話してくれてありがとな。俺頼りないかもしれないし、お前の邪魔になるかもしれないけど、でも味方だから、お前が守りたいものは絶対守るよ」
「…うん。ありがとう」
そう言うと大翔は少し微笑んだ。それが救いになったかは流河には分からなかった。
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