可愛い彼女が出来たのに【浮気相手/兄妹/奴隷】...etcなシチュエーションに付き合わされています。

田中又雄

第1話 玲咲有凪はとても可愛い女の子である。

「ね、有凪ありな!今日放課後カラオケ行かない?」


「おっ!いいね!いこいこ!あっ、せっかくならいろんな人誘って行こうよ!」と、彼女は楽しそうに教室を駆け回る。


 そんな様子をクラスの隅っこで、机に突っ伏しながらぼーっと見ていると、彼女が目の前に現れる。


「おっ!式城しきしろくん!君もカラオケに来るかい?」と、純粋無垢な笑顔でそんなことを言ってきた。


 突然の誘いに驚き、「えっ?あっ、はい...」と、勢いに負けて了承してしまう。


「お!それは良かった!よしよし!きっと、みんなで行ったら楽しいよ!」


 同情も、情けも、憐れみも、見下しもない裏表のない彼女。

あぁ、だから俺は彼女を好きなのだ。


 敵いっこないことくらいわかっていても、それでも勝手に恋をする権利はあるはずだ。


 その集まりは本当に最悪な時間であったが、それでも彼女を恨むことなんてなかった。

むしろ、彼女に対する気持ちは日に日に増すばかりで、学校に行く理由の9割は彼女になるほどであった。


 けど、これはただの片思い。

俺の心の中だけで終わらされるつもりだったのに...。


 ◇数日後


 教室の掃除当番をしていた俺は集めたゴミを所定の位置に運ぶべく、ゴミ箱を持って移動している時のことだった。


 ちょうど校舎裏が見える廊下を歩いていると、とある声が聞こえていた。


「え!?まじっすか!?明日、告るんですか!?」

「まぁな。前の彼女も飽きてきたところだし。まぁ、俺ならあの玲咲れいさきだとしても、簡単に落とせる自信があるしな」

「うわっ、新庄しんじょう先輩まじかっけーっす!尊敬します!」

「はっ、俺がいないと生きていけない体にしてやるぜ」


 その声の主は知っていた。

新庄しんじょう 彰人あきと

我が強豪サッカー部の3年生エースであり、超絶イケメン性悪ヤリチン男である。


 しかし、そんな噂など意に返さない女子が多数存在するほど、超絶イケメンな彼は、悪評が立つ中でも様々な女の子と付き合ってきた。


 俺が知っているだけでも10人...ワンナイトの数はその10倍くらいだろうと推察される。


 そんなやば男に俺の好きな女の子、玲咲有凪が目をつけられたのだ。


 玲咲さんが誰かと付き合ったという話は聞いたことはないが、あのイケメン相手では玲咲さんですらもしかしたら...と、キモを冷やす。


 けど、別に俺に何かを言う権利はないし、そんなことを言う間柄でもない。


 それでも、俺は嫌だった。

誰と付き合うとしてもあの男と付き合うのだけは嫌だった。

だから、俺は急遽、今から告白することに決めたのだ。


 もちろん、告白の言葉なんて考えていない。

やけくそというか、きっと何かきっかけが欲しかっただけなのかもしれない。


 そう思いながらゴミ箱のゴミを丁寧にぶちまけた後、彼女が待つ教室に向かった。


 ゴミ箱を持って教室に戻ると、彼女を含めた3名のクラスメイトが俺を待っていた。


「おっ!戻ってきた戻ってきた!よし!これで終わりだね!そうじかんりょー!かえろー!」と、彼女は楽しそうにそんなことを言う。


 そんな彼女に向かって俺は「あ、あの!玲咲...さん。少し時間...もらってもいいですか?」と、ほぼ告白まがいなことを言う。


「ん?いーよ!」と、楽しそうに笑う彼女と、そんな俺を見てクスクスと笑う2人のクラスメイト。


「じゃ、じゃあ...その...お、屋上に行きましょう」

「うん!」


 そうして、俺は2人で屋上に向かった。


 我が校は屋上が開放されており、いつでも使うことができた。

昼間は誰かしらいるのだが、放課後になると使用する人は限られてくる。

まさに、こういったシチュエーションがそれである。


 二人で屋上に到着すると、気持ちの良い風が全身を覆う。


「うぉー、気持ちの良い風だねー」


 そのまま、俺はベンチのあるところまで行き、そこで振り返り、その勢いのまま彼女に告白する。


「す、好きです!つ、付き合ってください!」


 目を瞑り、頭を下げながら手を差し出す。


 答えは分かりきっている。

それでも...それでも告白したのはきっと、後悔したくなかったからだ。


 そんな、身勝手でありふれた告白に対して彼女は「いいよ!丁度100人目だしね!」と、愛わからず無邪気に笑う。


「...え?100人目?」


「そー!告白してきたのが君で100人目なの!だから、決めてたんだ!100人目の人と付き合うって!ラッキーだったね!」


「...え?」と、やや困惑する俺。


 そんな俺をよそに話を続ける彼女。


「あっ!そうだ!付き合う代わりに、一個だけいいかな?私の言うシチュエーションには絶対従うこと。例外や拒否は一切認めない。それでもいい?」と聞かれる。


 正直、どんな理由であれ付き合えると言うことのあまりの嬉しさに、屋上から飛び降りろと言われてもしてしまいそうなほど舞い上がっていた。


 そんな俺にとっては彼女が提案してきたよくわからない条件などたいしたものではなかった。


「う、うん!全然大丈夫!」


「そっか!それじゃあ、改めてよろしくね!えっと...名前で呼んだほうがいいよね!りくくん!」


 こうして、俺と彼女のカップル生活が始まった...はずだった。

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