第2話♤ビビリないじめっ子をとりこむ
私は今のキャラに疲れてしまった。
不真面目な生徒からうざがられ、話しかけても素っ気ない返事しか貰えない。
教師からは頼られ、何かと押し付けられ、疲弊していく。
優等生という
不良生徒で知られる宇野亜沙美が数人で誰かをいじめている現場に遭遇し、堪らず声を掛けた。
「宇野さん、貴方は何をしているのかしら?」
「あぁ?げっ、加藤……何って、遊んでんだよ。なぁ?」
「……かぁ、加藤さんっ!私ぃっ……」
宇野達にいじめられていた二人のうちの一人が、囲んでいる人の脚の隙間から助けを求めてきた。
「宇野さん、お仲間さん達を解散して頂けないかな?」
「……優等生の御命令だ。戻れ」
宇野の一声で二人をいじめていた数人の生徒は散り散りに立ち去る。
囲んでいた壁がなくなり、床に座り込んでいた二人の顔が見えた。
私は屈んで彼女達に声を掛けた。
「もう大丈夫。よく耐えたね……ここを離れて戻りな」
二人の頭を撫でてから立ち上がる。
二人は急いで立ち去り、私と宇野がその場に残る。
「やめただろ。まだなんかあんのか、優等生さん?」
「優等生さんなんて呼ばないでくれない?宇野さんて呼んでるんだから、貴方のことを。いじめって、楽しいの?誰かをいじめられたら、満足するの?」
「なっ……なんだよ、説教か?ウゼェんだよ、そういうのが!」
「単なる興味でどうかを聴いてるだけ。どうなの、宇野さん?」
「……」
「イイ話があるんだけど、乗る?」
「ンだよ……加藤!何がしてぇ!」
「いじめられるんなら、誰でもいいってなら……私が提供するって話。宇野さんのすること、ちくらずにいてあげる。危ない橋、一緒に渡るのはどう?」
「……」
「裏切られるのが心配なの、不良なのに……?裏切らないよ、私は。だって、貴方が頷けば、私の裸の写真を渡すんだから」
「おまえ……ゆ、優等生だろ?何言ってんだ、さっきから……?」
「どうなの?ノるか?下りるか?」
「ほっ……ほんとに裏切らねぇんだよな、加藤?裏切ったら、許さねぇぞ!」
「ノるんだね。交渉成功っと……一人くらい誰か仲間が居ても構わないよ。人選は宇野さんの自由にして。じゃあ、今から私について来て」
「お、おい……加藤!待てよ」
私は宇野の呼び止める声に反応せず、廊下を歩いていく。
「おい、加藤今からっ——」
私は空き教室に脚を踏み入れ近付いてきた宇野の前でブラウスの留めていたボタンを外していく。
「加藤、何してっ——」
「貴方に渡す私の全裸の写真を撮るのよ、今から。黙って待ってて!」
「正気か……おまえ……?」
「……」
私はブラウスを脱ぎ、床に落としスカートのファスナーに手を伸ばし、下ろしていく。
スカートも足許に落ち、ブラジャーを外し、ショーツを脱いで、ソックスまで脱いだ私。
スリッパを脱ぎ、裸足で床に立つ私に、宇野は唖然としていた。
「さぁ、撮りなさい!私の裸を」
私に渡されたスマホで宇野が恐る恐る私の全裸の姿を撮る。
「撮ったよ、言われた通り……」
宇野はスマホを返す腕を震わせていた。
「これを渡すから交換しないと。さ、スマホを出して」
私は宇野と連絡先などを交換し、彼女に撮らせた私の全裸を撮った写真を送り、制服を着た。
「これで私は、裏切れない。これで安心でしょ、ビビリな宇野さん」
私はそのまま宇野を空き教室に残し、自身が所属する教室へと戻った。
私が宇野達と阿佐木梨加をいじめ始めた経緯がこんな感じの流れ。
私は優等生を演じているだけの、クズだ。
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