第21話 最悪は続く
――ピピピ、ピピピ、ピピピ!
俺はスマホのアラームにより目を覚ます。すっかり慣れた一人暮らしのマンション。いつのように昨日作り置きした料理をレンジで温め、その間で顔を洗う。
「酷い顔」
鏡に映る自分の顔を見てそう思った。前世では記憶があやふやなせいで分からないが、今世では初めて振られた。本気で好きだから、かなりショックがデカい。
俺は顔を洗い終え、温めた料理を取り出し机に置いた。
「………あ」
机には昨日、渡しそびれたクッキーがあった。
「………無駄になったな」
俺はそのまま捨てようとするが、手が止まる。
作った物には罪はないよな。つったく、俺としたことが食べ物を粗末にするところだった。
「ほん……と……によぉぉ」
狼狽え過ぎだろ。せっかく顔洗ったのに涙が止まらない。
◆実家に移動中
いつも通り、いつも通りを意識しろ。俺は華蓮達が目を覚ます前に手軽な朝食を作る。
「そう、いつも通りを意識するんだ」
「何言ってんの龍征?」
「なに!?華蓮早起きだな」
「今、朝の7時だけど。珍しく遅いね」
なんという事だ。いつも通りと全然違うではないか!でも大丈夫、誰だって遅刻くらいあるだろ、落ち着け、落ち着いて目の前の火柱を見るんだ。心が落ち着くぜ。
「ねぇ、フライパンから火出してるの珍しく本格的だね。火力高すぎない?」
「ああ、フランベな。ステーキとかにたまにつか………」
今作ってるの卵料理じゃん。
「ぎゃああああ!!華蓮事故った助けてくれ!!!」
「えええ!!!」
◇無事消火しました。
「うう、食材無駄にした………」
「気にするとこそこじゃないでしょ」
な、情けないことこの上ない。練習による失敗ならまだ良い。けど俺には技術も経験もある!それなのに心が乱れたことによって食材を無駄にするとは………未熟!
「私は0校時があるからもう行くけど、龍征疲れてるなら、ちゃんと休んでよ」
「うん」
どうしよう。今日学校休もうかな……、でも家にいてもやる事ねぇし。また泣きそうだから行こうかな。
しばらくソファに座り、行くか行かないか悩んでるとソフィアとお嬢様が降りてきた。
「おはよう。珍しいねまだ学校に行ってないなんて」
「龍征、おはよ」
「おはようございますお嬢様。ソフィアもおはよう。今、学校サボるかサボらないか迷ってるんだ」
真面目なソフィアの事だ。きっと「いや、行きなさいよ」と言うツッコミがあるはずだ。
「そう、無理しないでね」
「………俺ってそんな分かりやすい?」
「当たり前じゃない。だって毎日楽しそうな人が急にちょっと楽しくなさげだったら気付くでしょ。それにまだ朝食出来てないし」
「あ、今から作るよ」
「いいわよ。今日は私が作るわ」
そう言ってソフィアは朝食を作りに行った。はぁ、こういう時は甘えるか。時間が経てば少しは落ち着くだろう。
「龍征、大丈夫?アリィがいるからね」
「お嬢様!一生ついていきます!」
◆
俺は結局学校に行くことにした。心配をかけたくないのもあるが、動いてた方が何となくいい気がした。あと、一人になりたかったのでソフィアやお嬢様より先に出た。
「あーあ、これからどうしよう」
鏡花をすぐに忘れて、はい次!ってやった方がいいのか?けど、もうしばらく鏡花以外の人との恋愛はいいや。
モテない事は知ってる。ならモテる努力するか?自分磨き的な奴。勉強でもするか………前にも同じこと言った気がする。
って、もうそんなこんなで学校か。
「おい兄弟!どうゆう事か説明しろ!」
学校についた途端、侑が急に詰め寄ってきた。
「なんの話だ?1から10まで全部説明しないと俺は分からん」
「この写真の事だ!」
なるほど百聞は一見にしかずだな。俺は侑のスマホに写る写真を見る。
その写真には、俺が知らん女とホテルに入って行く写真だった。
What the fuck?
あとがき
主人公いじめるの楽しくなってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます