第20話 デート
デート、それは即ち戦争である。今考えた。これ以上考えても後付け理論は展開出来ないのでやめておく。
とりあえず現時刻朝7時00分、鏡花とのデートの時間は10時00分。楽しみすぎて3時間前に来てしまった。
「休日だと言うのに、出勤するサラリーマンを見て涙が浮かぶぜ」
サラリーマンの憂鬱さのせいで楽しい気分が台無しではないか。駅で待ち合わせしているから人が多すぎてそろそろ吐きそう。
「て言うかもう吐オロロロロロロ」
◆デート時刻10時00分
「あ、龍征おっそーい。女の子を待たせるなんてダメなんだゾ」
鏡花がそんな風にあざといポーズで注意する可愛い。
いや、3時間前に行ってよかったよ。家に帰ってシャワーや服を変える時間があった。ゆっくりし過ぎて10時丁度に到着してしまったけど。
「すいやせんした!この龍征、此度のデート誠心誠意お楽しみいただけるよう、全力を尽くす次第です」
「あはは〜おもしろ〜い」
というわけで俺が最初にデートで選んだ場所!それは映画館だ!おい、無難とか普通とか面白くないとか言ってんじゃねぇよ。こっちは真剣なんだよ。
「というわけでlet's go!」
◇映画館入場口
「鏡花何見る?」
「え〜、龍征のお任せでいいよ」
「じゃあ、プリキュ」
「私恋愛映画がいいな〜」
そのまま、よくわからない恋愛映画を見ることになった。解せぬ。
◇映画終わり 近くのカフェ
――ポタ、ポタポタ
「なんだよ、うっ、なんなんだよあの映画はよ!うっ、泣けるじゃねぇか、うっうぅぅ」
なんでいつもいつも病気で寿命が残り少ない設定出すかなぁ、なんだよ俺はバッドエンドは嫌いんなんだよぉぉ!
「あはは、悲しかったよね。私も思わず涙が出そうだったよ」
「うっ、ずびび。本当によ、なんでバッドエンドにするかなぁ〜」
「そうだね。けど死があるからこそ生きる事の素晴らしさが分かるんじゃない?」
「うぅ、そんなの無くたって生きるのは楽しいよぉぉ、逆に死があるから楽しくなくなるぅぅ」
「………」
うぅ、つったくよー。せっかくの楽しいデートが涙で台無しじゃねぇか、うぅぅ。
◇デート終わり
カフェで昼食をとった後、近くのショッピングモールで色々と見て回ったり、ゲーセンで少し遊んだりしてデートは終わった。
「じゃあね龍征。今日は楽しかったよ」
日が沈みかけた頃、俺は鏡花を家まで送って帰路につく。
今日のデート、俺は楽しかった。けど鏡花はどう思っているのだろうか?原作の知識によれば鏡花は嘘を簡単につく性格だ。
「けど俺には分からん」
けど、これが恋愛の醍醐味だろうな。相手がどう思ってるか分からずに悶々とする。そう思うとテンション上がってきた!うへへ、俺ちゃんと青春してる!
「楽しいな〜」
少し恥ずいけど、このまま関係を深めていっていずれは結婚まで行くのだろうか?子供はやっぱ二人か三人は欲しいな〜。兄弟がいた方がきっと楽しいしな!喧嘩もあると思うけど。
「な〜んてな」
今考えてしかたねぇよな。今は鏡花に全力で好かれる事を考えよ。今日のデートでは沢山話せて良かった。色々と好きな食べ物とかも聞けたしな。今度作ってみよ。
「ふんふーんふーん」
真面目に誠実に謙遜に思いやりを持って接していけば、きっといつかは本当に好かれるよな!手始めに珍しく勉強でもすっか。将来性がある男って思われたいし!
◆1ヶ月後
あのデートから俺と鏡花の恋人生活は普通に流れて行った。相変わらず俺が弁当を作って一緒に食べたり、休みの日はディズニーに行ったり、公園行ったり、カラオケ行ったりとデートも欠かさなかった。電話やメールだって、相手に迷惑にならない程度に毎日続けた。
相手に自分がどれだけ好きなのか伝わるのは行動だけだ。鏡花に好かれたい。鏡花を支えたい。彼女を笑顔にしたい。その思いで彼女に接した。
その純粋な気持ちが彼女にも伝わると信じていた。例え前世の記憶で極悪非道な凶悪女でも、俺が変われば彼女も変わると思ってた。だから期待していたのかもしれない。
――鏡花が本当に俺を好きになる事を
◇
5回目のデートの帰り道、夜の誰もいない公園。蛍の綺麗な光が、夜の星空と相まって幻想的な空間を生み出してしていた。
今日は、付き合って1ヶ月記念のデート。俺はこの公園でプレゼントを渡そうと思ってる。初めは何を渡せば良いのか分からなかった。
だってネックレスとか時計だと重いやん。かと言ってハンカチとか日用品だとセンス問われるやん!
というわけで特に考えずに渡せる手作りクッキーにした。メッセージカードつきだ!結構良い素材を使ったから一ヶ月記念には丁度いいんじゃないか?恋愛初心者だから知らんけど。
「綺麗だね、龍征」
鏡花がそう呟いた。いつもと変わらない笑顔、いつもと変わらないあざとさ。いつもと変わらない何も読みとらせない瞳。
「ああ、けど鏡花の方が綺麗だぜ!」
「ふふ、ありがとう。ねぇ龍征、今日はなんの日か分かる?」
「ああ、もちろん。付き合って1ヶ月記念日だろ。忘れないよ」
俺は鞄からクッキーを取り出す準備をする。よし、タイミングを見て渡そう。
「うん、そうだね。私と龍征が付き合って1ヶ月あっという間だったね」
「そうだな。楽しい時間はあっという間に過ぎってた。寿命の体感時間が早くなるのが怖いくらいに」
「うん。私はね、この1ヶ月間………
この時、今まで早く感じていた時間がゆっくり感じる。理由は分からないけど、鏡花の表情がよく見えた。それはこの1ヶ月間初めて見る本当の笑顔。
――とてもつまらなかった」
そして、俺が絶望するのに事足りる一言が待ち受けていた。
俺はクッキーを渡そうとした手が止まり、身体が硬直して、喉元から全身が一瞬で冷え切る。
何がいけなかったのか何が悪かったのか、今考えるべきではないことが脳内を巡り、何も声に出せない。
「だから別れよ」
鏡花はそう平然に、壊れたおもちゃでも捨てるかのごとく俺を見て、一人で帰ろうとする。
「帰りまで送るよ」
思考が全くまとまらない中、なぜかそのような言葉が出てきた。俺は自分で何を言ってるんだと思い、鏡花の顔を見る事が出来ずに下を向く。
「………ふふ、大丈夫。タクシーで帰るから」
鏡花はそう言いながら公園から離れた。
――ポタ、ポタポタ、ザーザー
ポツポツと降り始めた雨が一瞬にして豪雨になる。
まったく、これだからラブコメ世界は、天気予報では晴れだったのに。今更俺が涙を誤魔化すかよ。
「………クッキー渡せなかったな」
あとがき
ヤンデレのタグ消してシリアスって設定ちょっと追加するわ。そうですよ設定ガバガバで書いてます。すいませんしたぁ!!🙇🙇🙇
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