仲間に裏切られた魔法使い④
「マ、マズい・・・ッ! おーい、頼むー!! 俺を受け止めてくれー!!」
そう言いながらエルヴィスは落ちていく。 その声に下にいる青髪の男はようやく気付いたようだ。
「え、は!? うわッ!!」
必死に壁に掴まろうとはしてみるが、鍛えていないエルヴィスには到底無理な話。 ただそのおかげで速度を多少なりとも抑えることには成功し、下の人は確かに受け止めてはくれたが共に崩れ落ちた。
「いたたたた・・・」
二人は一緒に腰を擦る。 それでも怪我がないのは男の下に使い魔であろう可愛らしいドラゴンがいたからなのかもしれない。
「凄い勇気だな、あんな上から飛び降りるなんて・・・」
そう言って男は塔を見上げる。
「いってぇー・・・。 あ、受け止めてくれて感謝する!! 無事か!? ・・・無事じゃなさそうだな」
そう言って少し潰れて地面にめり込んでいる使い魔を見た。
「いや、使い魔は丈夫だから」
「でも目を回しているぞ」
完全に目を回していて起き上がりそうにないが飼い主が大丈夫だというなら大丈夫なのだろう。
「これくらい平気さ。 それより君はどうしてあんなところから・・・」
「いたぞ、捕まえろ!!」
男が尋ねようとしたその時頭上から声が聞こえてきた。 見るとようやく脱走したことがバレたのか警察が追ってきていた。
「け、警察!? 警察がどうしてッ」
「わ、マズい・・・ッ! なぁ、頼む!! コイツで俺を運んでくれないか!?」
そう言ってドラゴンを指す。
「君が追われているのか? もしかして脱獄でもした・・・?」
「脱獄はしたが無実だ! 脱獄幇助には絶対にさせないから頼む!! 一生のお願いだ!!」
「無実だとしても脱獄幇助には違いないだろうけど、深い事情がありそうだな・・・。 分かった、振り落とされないように!」
既に立ち直っていたドラゴンに乗って逃げたおかげで何とか撒くことができた。 それでも一応注意しながら森の中へと隠れる。
「とりあえず逃げ切った・・・。 ありがとな。 でも理由も聞かずにどうして俺に協力してくれたんだ?」
「本当に犯罪を犯したかどうかくらい見れば何となく分かるさ」
「ふぅん・・・」
話していると丁度端末へニュースが届いた。 二人同時に鳴り同時に端末を覗き込む。
「まさか、これがもしかして君・・・?」
そこに書かれていたのは先程魔法石を盗んだ犯人として捕まえたエルヴィスが脱走したというものだった。 エルヴィスの写真も載っており男は端末とエルヴィスを交互に見比べている。
「ち、違うんだ、落ち着け!! 石を盗んだのは俺じゃない!!」
「落ち着くのは君の方だ! 静かにしないとまたすぐに見つかるぞ!」
「そ、そうだった・・・。 どうしても俺は無罪だと証明したいんだ。 だから本当の犯人を捕まえたい」
「本当の犯人・・・? 何か目星でも付いているのか?」
「いや、全く付いていないけど・・・。 誰か姿を見た人がいるかもしれないし聞き込みとか? この近くに確か街ってあったよな」
「なるほどな。 とにかくやっていないから真犯人がいるはずということか。 でもやっていないなら正直に話せば分かってくれるんじゃないか?」
「正直に話しても誰も信じてくれないから困ってんだよ。 映像も撮られているし」
「映像を撮られていたなら君が犯人なんじゃ・・・」
「いや、それが違うんだよ! でっち上げなんだ!! でも何故か俺と背格好が似た男が逃げる瞬間が映っていた」
「・・・」
男はそれを聞いて考える素振りを見せた。
「たまたま偶然映像が残っていたなんて出来過ぎている気がするな」
「そうだろ? ・・・まぁその時間帯の記憶は一切残っていないんだけど」
「おいおい、そう言われると改めて怪しく思えてくるな」
「だから違うんだって。 アンタだって寝ている間の記憶なんて残っていないだろ?」
「寝ていたということか。 まぁその時間は普通は寝ているよな」
「そうなんだよ」
「手がかりがないのに犯人を捕まえる必要はないと思うけど? 相手はどういう人か分からない以上危険だ」
「確かにそうかもしれない。 だけど魔法が使えないのは俺だって困るんだ。 それに賞金も出ているし・・・」
「君は魔法使いか?」
「あぁ」
「確かに魔法使いが魔法を使えないのは困るな」
「だろ? そう言えばこのドラゴンは魔法がなくても大丈夫なんだな」
男はドラゴンを撫でた。
「コイツも普通と同じだけど今は何とか大丈夫なようだな。 時間が経つこの先が心配だけど、まぁ可愛がってやってくれよ。 基本的に俺以外には懐かないが」
「そうか・・・」
エルヴィスも同じように撫でようとする。
「ガオォォ!!」
「うわッ!!」
エルヴィスは気に入られていないようで威嚇されてしまった。
「お、俺には無理そうだ・・・。 とりあえず街へ行きたいんだけど」
「じゃあまた乗っていく? 丁度俺も腹が減ってさ。 街はすぐ近くだよ」
そういうことでドラゴンに乗りながら街へと向かった。
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