お前は…誰だ…?

「ん?」


誰だ…こいつ、確かに 姉さんと名前は一緒だ

朝、学校行くの見送ったから

姉さんが休んで代理、とかでもない…筈

輪郭も、髪の長さも同じっぽい…でも


「皆さんはこの学校にくるとき、

何を感じましたでしょうか?

桜満開で楽しみを感じましたか?

見知らぬ人達で不安を感じましたか?

僕は一年生の頃、とても不安を感じました。

ですがどのみち此処にいるのはみな

仲間です。

次第に打ち解けていき、学校生活が必ず楽しくなる事でしょう…」


淡々と続ける姉かも分からぬやつ

僕?声も、口調も、全く…姉とは違うもの

生徒代表で入学式の言葉だから丁寧なのは少し分かるが、それでこの変わり様は可笑しいと思う…


「本当に、誰だよ…」


それだけが、不快だった。


──────────────────


「あの司会者の先輩イケメンじゃなかったぁ?」

「え、そうだよね!」

(またその話かよ…)


そんな事を思いながら、姉を探しに行く。


「~~」

見付けた。

どうやら先生となにかを話しているようだ

「姉さん!」

そう呼ぶと全員が此方を見る

「ぁ、ぇ、っ、と、…」

(まずい、俺、コミュ障だ、…)

「姉さん…?」

先生が不思議そうな顔で此方をみてくる

そこで口を開くのが奴だ

「きっと、自分をその“御姉様”と間違われたのでしょう。

どうしたのですか?人探しですか?

それとも、迷子?」

やけに丁寧な対応で俺は逆に気持ち悪さを感じた


なんだよ、こいつ…弟を、見知らぬ奴みたいな感じで扱いやがって…


「…迷子で…」


なんでだ、素直に、何か 言えない…

でもそれが好転した


「では、ぼくが送りましょう。

一年の説明会は終わりましたか?」

「ぁ、うん、…」

「ならば、校舎まで案内致します。」

そう、俺は姉と思われしき人物に校舎までつれられる羽目になる──────────────────

「…此処ならだれもいない…」

「?」

奴がそう呟き足を止めたので、俺も止まる

「…蒼太…もう、この学校で『姉さん』だなんて呼ぶのはやめて」

それはいつもの姉だ

でも、声は酷く怯え冷たい

「は?何でだよ、事実だろ?」

「それでも此処では秘密にして」

「嫌だよ…!」

「あんたには分かんないでしょ?!」

「っ、何が、だよ…?」

「…良いわよ、それは、分からなくたって…

そうゆう、ことだから、もう、やめて頂戴。

貴方に姉はいない、ましてや『兄』何て言うのも駄目よ、分かった?」

「……分かったよ…」

「…ありがとう、ごめんないね、強く言いすぎて…」

「…」


こんな姉、始めてみた。

何がそんなに嫌なんだろ…


『このでき損ない

お前なんて生まなきゃ良かったのに』

『憂七の方がよっぽど賢いな』

『お姉さんはもっとできたわよ?』


うるせぇ…うるせぇよ…分かってる、分かりきってる…それでも…お前は…

──────────────────

「何言ってんのよ!」

「はぇ?」

「メソメソしないの!

回りの奴の意見なんてあんたの努力も分からず、理想だけ語る根拠の無い意見なんだから!

耳傾けない!無視して良いの!」

「でも…でも…ッ…!」

「私が蒼太の事、一番分かってるから!」

「…姉ちゃん…!ありがと!!」

「良いのよ!蒼太!」



───味方で居てくれると思ったのに

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