雪の森

「えー、先程手に入れたこれを……使いたいと思います!」


勇者はビルから譲り受けた秘宝を手にそう口にする。


「お師匠!ついに使うんですね!」

「あぁ、ついに使うんだよ」

「……ついにも何もさっき手に入れたばかりじゃない。というかせっかくお高そうなのに勿体ない……」

「……」

「これはな……エリクサーって言って凄い薬なんだ。どんなものも治せる秘宝だ。これをフィリに使う」


▶勇者はフィリにエリクサーを使った


「―――……あ、……あ」

「あ、フィリさんが喋りました!もしかしてお師匠は秘宝でフィリさんが喋れるようになることを知っていたんですか!?」

「まぁ」

「さすがお師匠!」


「ということでフィリ、俺の名前を呼んでみてくれ!」

「……いう……しゃ」

「そう!勇者!」

「ちょっと勇者様?それは名前なの?」

「……そういえばお師匠の名前は聞いた事ないです!」

「まぁ、勇者だからね!」


「ってことで、フィリの声も治ったので次は雪の森に行こうと思います」

「雪の森……?」

「お師匠、雪の森ってなんですか!」

「勇……者」

「えー、魔王城への最短裏隠しルートです。なので雪の森を抜けたら次はもう魔王城!」

「……そう、なら次が一緒に私の行く最後の場所なのね」

「え、マネいなくなるの?」

「勇者様、そういう契約でしょ?」

「マネさんがいなくなるなんて悲しいです!」

「マ……ネ……?」

「私、怖いのは苦手なの」


そうして、マネにとっては最後の目的地である雪の森向かうのであった。


―――ピヨピヨ、ワンワン、ニャーニャー、オラオラ、森に入ると生き物達のそんな鳴き声が聞こえてくる。


「わぁー凄い……幻想的な場所ですね、お師匠!」

「うん……すごく、すごいよね」

「そうね」

「き……れい」


沢山の緑の木々、そして空からは何色もの雪の結晶がふわふわと降りてくる。


『―――おいなぜ人間がここにいる!』


「……お師匠、今なにか聞こえた気がします」

「聞こ……えた」

「そうね、何か聞こえたわね」

「うーん、精霊さんじゃないかな」

「精霊さん!精霊さんいますかー?」


『うっせぇーやい!さん付けじゃなくて様だろ!』


そんな声が返ってくるも姿は見えない。


「……やっぱり気のせいですかね?お師匠はどう思いますか」

「うーん……やっぱり精霊さんだよ」

「そうですか!」


『おい人間!よく見ろよ!いるだろここに目をよーく凝らせ!』


「……い……る。」

「確かに、目を凝らしたら見える気がするわ」

「そうですね!」


『あ、透明化してた』


自身が透明化していたことに気がついた精霊は今後とこそその姿を表した。


「よぉ!俺こそが雪の精霊さ!」

「わぁ……お師匠、ちっちゃくて可愛いですよ!」

「かわ……いい」

「可愛いわね」


精霊の姿は雪のように白く柔らかな肌に透き通った髪を編んだ小さな少女であった。小さくて可愛い。


「あぁ?可愛いだとー?べ、別に褒められても嬉しくないんだからな!」

「うん、正統派ツンデレ」

「ですね!」

「そうね」

「う……ん」


そんな、正統派ツンデレの美少女精霊に勇者一行が癒されていると……


(グワァン!)

空間に穴が空いて身体を燃え上がらせる魔物が現れた。

「ふっ、我こそは―――」


▶勇者の渾身の一撃

最後の四天王は消滅した


「……お師匠、今何かいましたよね?」

「うーん……気のせいじゃないかな」

「そうね、気のせいよ」

「気の……せい」


最後にして最強の四天王が姿を表したように思えたが気のせいだったようだ。


「……所で人間!お前ら何の為にここに来たんだよ!」


そして雪のツン美少女精霊が勇者一行にここをここを訪れた訳を聞く。


「あーと、魔王城に行くための近道だから寄ったんだよね」

「そうです!」

「そうなのよ」

「う……ん」

「は?いや、そんな近道だからーみたいに言ってるけど、まずなんでこの場所をなんで知ってるんだ!」


雪のように透き通った美少女が反論をする。


「……まぁ、知ってからとしか言いようがないよね」

「私はお師匠に着いて行ったらいつの間にかいました!」

「同じくそうよ」

「私……も……」


「えぇ……(ドン引き)」


奇跡的美少女精霊がドン引きをしている。


「それに俺……勇者だから早く魔王討伐しないといけないんだよね」

「勇者だと?そうか……」


勇者が勇者であることを告げると雪の精霊は納得したように頷いた。


「勇者なら知っているのも納得……まぁ、そのなんだ。勇者としての使命……それを果たす為であればこの森を通って行けばいい」


「やったぁー流石精霊さん!」

「流石精霊さんです!」

「そうね」

「さす……が」


「ぐぬぬ、様をつけろ!」


そうして1悶着はあったものの勇者一行は近道で魔王城へと向かうことができるようになった。


「―――ところで」

「なんだ、早く通らぬか」


早速魔王城へと向かうのかと思ったが、勇者は足を止めて美少女精霊に話しかけた。


「今日1日ここにとまってもいい?」

「……は?」

「いや、魔王城行くの明日にするからさ」

「いや……無理なんだが、というか嫌なんだが」

「いいじゃん!疲れたの!勇者だって休みたいの!」


▶勇者は駄々をこねた

精霊は再びドン引きした


「まぁ……他の精霊を起こさないのであれば1日くらい……特別だからな!」

「ヒュー流石精霊様!」

「ふん、俺の偉大さが分かったか!」

「流石精霊さんです!」

「流石精霊ちゃんね」

「さす……精」


「……やっぱり無礼者だ!さす精に至っては特にやめろ!」



美少女精霊を旅に加えられない勇者の旅も終わりは近い。だが勇者の旅は終わらない―――












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