そして、選択は訪れる







それは、いつも通りの偵察任務のはずだった。

ミリアと共に向かった、辺境の廃村跡地――**オルネ村**。


しかし、現地で待っていたのは、完全に予想外の光景だった。


 


「……やられた、か」


リクの表情が硬直する。


ハンターギルドが密かにマークしていた“異形生物”の巣――

その中心に現れたのは、見たことのない《異質な魔術式》と、それを操る**仮面の魔術師**だった。


 


「久しいな、“観測者に選ばれし者”よ」


仮面の魔術師は、黒いローブを翻しながら告げる。


 


「なあ、あんた……一体何者だ」


「我々は、“過去”を修復する術を研究している。

君が持つ“鍵”は、我々の理想の実現に不可欠なのだよ」


 


その瞬間、魔術師の背後から発せられた魔力が周囲を侵食し始めた。


地面が膨れ上がり、異形の魔物たちが這い出してくる。


村跡は、異界化を始めていた。


 


「くっ……! ミリア、下がってろ!」


「リク、あたしも戦う!」


 


だが、力の差は圧倒的だった。


仮面の魔術師の操る魔術式は、“世界法則の外側”のような異常な挙動をしていた。

リクとミリアは徐々に追い詰められていく。


 


そして――


 


「リク……ごめん、先に……行って……!」


ミリアの身体が、魔力に飲まれて崩れ落ちる。


その瞬間、リクの中で何かが“ブチッ”と音を立てて切れた。


 


「……っ……ぐ……ッあああああああああああ!!!!!」


 


怒りと絶望。

振り下ろした剣は、仮面の魔術師をかすめることすらできなかった。


だが――


 


《選べ。今、選べ》


 


あの夜聞いた声が、再び頭の中に響く。


 


《ここで終わるか。それとも――》


 


《過去に手を伸ばすか》


 


リクの胸ポケットから、あの紙片が宙に舞った。

「オルネ村跡地」と記されたそれが、光を放つ。


 


「――やり直せるのか……本当に……!」


 


その問いに、誰かが答えたわけではない。


だが、次の瞬間。


リクの視界が、黒く沈んだ。


まるで、世界ごと巻き戻されていくかのように――


 


 


> 「リク、おーい。お寝坊さん、起きてる?」


耳慣れた声。

まぶたの向こうから差し込む、やけにまぶしい朝日。


彼は、夢でも見ていたかのように、うっすらと目を開けた。


 


そこは、**一週間前のハンターギルド宿舎**だった。


目の前には、元気そうなミリアの笑顔。


そして――


リクの胸元には、なぜか**紙片がもう一度入っていた**。

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