遠征④



霧の立ち込める銀霧の森の奥深く、リクとマリーはついに中ボス級の魔獣「シルヴァス・ビースト」を前にしていた。目の前に立ちはだかる巨体の獣が鋭い牙を剥き出しにして威圧する中、リクは冷や汗を感じながらも剣を構え、覚悟を決める。


「マリー、少し離れててくれ。俺が前で食い止める。」リクが一歩前に出ると、マリーもわずかな不安を隠しきれない表情をしながら頷いた。


シルヴァス・ビーストは地を揺らすほどの一撃を振り下ろしてきたが、リクはその巨体に翻弄されることなく身軽にかわし、反撃の隙を狙って素早く横から切り込む。だが、獣の分厚い毛皮が剣を阻み、傷は浅い。リクは瞬間的に焦りを感じたが、それでも逃げ出すことなく立ち向かい続けた。


「今は、逃げない…やり直しなんて、しないんだ…!」


その意志が新たな力を生み、リクは再び勇気を奮い立たせた。次の瞬間、マリーの支援魔法が彼に降り注ぎ、身体が軽くなったように感じる。魔力の恩恵を受けたリクは素早く再度切り込み、剣が見事に獣の胴体を貫いた。シルヴァス・ビーストが轟音とともに地面に崩れ落ち、息絶える。


「やった…倒したぞ!」リクは肩で息をしながら、勝利の余韻に浸っていた。そのとき、不思議な感覚が全身を包み込み、内側から力が湧き上がってくるのを感じた。


「これは…まさか!」リクが驚きとともに手を見つめると、ステータス画面に示された自分のレベルが「5」から「6」へと上昇しているのを確認した。魔獣との激闘を経て、自らの力がまた一段階強化されたのだ。


「リク、レベルが上がったのね!」マリーも目を輝かせ、彼の成長を心から喜んでいる。


「うん。自分の力で、ここまで来られた…本当に嬉しいよ。」リクは照れ隠しに軽く頭をかきながらも、彼女に感謝の笑みを向ける。マリーの支援があってこそ、この勝利があったことを改めて実感していた。


二人は達成感とともに、さらに奥へ進む決意を新たにする。銀霧の森での試練を乗り越え、レベルアップを果たしたリク。新たな力とともに、まだ見ぬ強敵や挑戦に向かい、成長を重ねていくのだった。

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スキル『やり直し』だけで世界最強!?根性だけで頑張りました。 @ikkyu33

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