次のクエスト



換金が終わると、リクは手に入れた金貨を握りしめながら、次の目標を考え始めた。今のレベル4では、まだまだ小さなクエストをこなすしかないが、オーガを倒したことで自信がついた。この調子で強くなれば、もっと大きなモンスターに挑戦できるはずだ。



彼が冒険者を志すきっかけとなったのは、まだ幼かった頃に目撃した光景だった。


あの日、村が突然の盗賊団に襲われ、住民たちは逃げ惑い、怯えていた。そのとき、たまたま村を訪れていた一人の冒険者が、村人たちを守るために立ち上がった。彼は誰も傷つけさせまいと、勇敢に盗賊たちに立ち向かい、圧倒的な力で彼らを退けた。幼いリクはその姿を見て、目を輝かせ、胸が熱くなったのを覚えている。


「いつか、自分もあんなふうに強くなって、誰かを守れる存在になりたい…」



その憧れが、リクにとって強さを求める原動力になった。それ以来、彼は村の小さな畑仕事や力仕事を手伝いながら、体を鍛え続けてきた。簡単に強くなれるわけではなかったが、あの冒険者の姿が心に浮かぶたびに、諦めることなく挑戦し続けてきた。



その時、脳内にこだまするかのように、微かな声が届いた気がした。

…リーを…守っ…れ…必ず…


「ん?今何か聞こえたような…」


次元の狭間から漂うその声は、彼の今後を左右する運命の始まりであった─。



* * *



「次は何をしよう…?」彼はギルドの掲示板に目を向けた。そこには、様々なクエストが掲示されており、中には高レベルの冒険者向けのものもあった。


「いや、まずはもう少し経験を積まないと…」リクは独り言をつぶやきながら、掲示板の前で思案した。その時、ふと目に留まったのは、近くに掲示された小さなクエスト。「村の周辺に出没する狼型の魔物を退治せよ」という内容だった。


彼は確かにオーガを倒し切ることに成功したが、それはあくまで攻撃パターンを学習したからであった。さまざなタイプの魔物と戦うことで、より戦術の幅を広げようと考えていた。すべては強くなるために。



「これなら、挑戦してみる価値があるかも…」リクは思い切ってそのクエストを受けることに決めた。自分の実力を試すためにも、今のうちに動いておく必要があると感じていた。


ギルドの受付でクエストを受け取った後、リクは外へ出た。外の空気は新鮮で、心が洗われるようだった。彼は改めて自分の目的を思い出す。強くなって、より大きな冒険に挑むこと。


「まずは、この魔物を退治してみよう。」彼は拳を握り、意気込んで村の外へと向かった。


途中、リクは考えを巡らせていた。この世界での冒険者としての生活は、想像以上に厳しいものだ。しかし、彼には“やり直し”という特別な力がある。何度も失敗を重ねる中で、自分が成長できると信じていた。


「たとえ失敗しても、またやり直せる。」その思いが、彼を支えていた。


村を抜け出し、森へと足を踏み入れると、周囲の静けさがリクを包み込んだ。心を落ち着けながら、彼は魔物の気配を探り始めた。緊張感が高まる中、彼は自分がどこまで成長したのか、今から試すことに胸を高鳴らせていた。


「必ず、このクエストを成功させてみせる!」リクは自分自身に言い聞かせ、魔物の出現を待ち受けた。

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