レベル3の冒険者



リクは、草原に座り込み、改めて自分の状況を整理していた。手元のステータスプレートを見つめると、自分のレベルが表示されている。


「レベル3か…」


冒険者としては、あまりにも低いレベルだった。冒険者のギルドに所属する者は大抵、訓練や小さなクエストを通じて少なくともレベル5以上になるのが常識で、リクのようなレベル3では弱すぎて認められないことも多い。実際、村人たちからも「そんな低レベルで何をしに行くんだ?」とからかわれる始末だった。


リクが今いるこの世界は、異種族が共存し、モンスターが至るところに生息する広大な大地で、冒険者にとっては命がけの世界だった。モンスターもまたレベルを持ち、人間と同じように力を蓄える存在である。低レベルの冒険者には小さな魔獣でさえ脅威になることが多い。


「こんな状況で“やり直し”ばかりしてたら、いつか本当に心が折れちまうかもな…」


“やり直し”のスキルは、確かに強力だが、リクにとってはその発動が毎回のように悔しさと失望を伴っていた。彼は、ただ強くなりたいという純粋な思いだけで、何度も何度も挑戦しているが、いつも失敗と“やり直し”の連続だ。あのオーガに勝てる日が来るのか、そんな不安が頭をよぎる。


「けど、このスキルで強くなるためには、まず根性が必要だ。少しずつでも前に進んでいくしかない」


リクは拳を握り、決意を新たにする。自分のステータスに表示された「スキル:やり直し」は、他人が理解しないだろうが、彼の最大の武器でもあり、最も辛い試練でもあった。


この世界で強くなるには、ただの才能や力だけでなく、何度でも立ち上がる精神力も必要だ。そして彼はその「根性」こそが、やがてこの世界で最強になるための鍵だと信じ始めていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る