スキル『やり直し』だけで世界最強!?根性だけで頑張りました。
@ikkyu33
始まりはいつも「やり直し」
暗闇の森の中、リクは荒い息をつきながら膝をついていた。目の前には巨大な棍棒を手にしたオーガが立ちはだかり、その凶悪な瞳がこちらを見下ろしている。身体中が悲鳴を上げ、剣を握る手も震えていた。汗が額を伝い、地面に落ちる音さえも妙に大きく感じられる。
(もうダメだ…。)
リクの心にわずかに残った希望が、一撃ごとに削られていく。何度も試行錯誤を重ねた戦術も、オーガの圧倒的な力の前では無力だった。これまで積み重ねてきた努力や経験が、すべて踏みにじられるような敗北感。それでも逃げることだけは選べなかった。逃げたら、自分自身を裏切る気がして――。
巨大な棍棒が振り上げられ、空気を裂く音が耳を刺した。
(これで終わりか…。)
絶望が胸を満たすその瞬間、何かが頭の中に響き渡った。
「あなたは死にました。スキル『やり直し』を発動します。」
突然、視界が暗転し、意識が途切れた。
目を開けたリクが見たのは、草原に広がる穏やかな景色だった。耳に届くのは風に揺れる草の音、遠くから聞こえる鳥のさえずり。身体に残っていた痛みもなく、傷一つない。装備は新品同様で、まるで冒険を始めたばかりの頃に戻ったかのようだった。
「また…か。」
リクは拳を握り締め、立ち上がる。スキル『やり直し』が発動したのだ。この能力――死ぬたびに少し前の時間に戻る特殊なスキルは、リクの命綱でもあり、同時に最大の試練だった。
最初は驚きと戸惑いばかりだった。それがどれだけ強力な力なのか、リク自身も理解している。敗北してもやり直せる。その度に敵の攻撃パターンや弱点を少しずつ覚え、確実に進歩していく。しかし、その代償は決して小さくなかった。
何度も「死」を経験する度に、リクの心は削られていった。恐怖、痛み、無力感――そのすべてが現実のように残り、再び立ち向かうたびに自分自身との戦いを強いられる。それでも、リクは決して屈しなかった。
「何度だってやり直してやる。これが俺のスキルなら、俺はこの力で最強になる。」
リクの胸に灯ったのは、静かだが揺るぎない決意だった。たしかにこのスキルは辛い。しかし、それは同時に、無限の可能性を秘めている。過去の失敗を糧に、少しずつだが確実に成長する。スキルを「呪い」ではなく「武器」として使うことが、リクの生き方だった。
再びオーガと対峙するその瞬間、リクの瞳には迷いはなかった。草原に戻された時、心の中に生まれた焦燥感は、今はむしろ彼を支える力になっていた。
「次は負けない…!」
剣を握る手に、確かな力がこもる。恐怖を克服するたびに、自分が少しだけ強くなっている気がする。たとえ何度倒されても、それが「終わり」ではない。成長のための「通過点」でしかない。
オーガが棍棒を振り上げた瞬間、リクは足を踏み出した。その動きは迷いのないものだった。彼はもう、後ろを振り返ることはない。何度でも、前へ進む。その先に、自分の望む強さがあると信じて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます