冒険者稼業は世知辛い



「この世界では、冒険者の死亡率は異常に高い…」リクは思い出す。村の長老が語っていた話を。レベル15に達する前に3人に1人が命を落とし、レベル20に至っては2人に1人が死亡する過酷な環境。仲間を失った者たちの姿が、彼の心に影を落とす。



リクは不安に襲われた。仲間がいる中での冒険ならば、恐怖も分散できるが、今は一人だ。やり直しを発動するとそれまでの冒険がリセットされるため、仲間がいては記憶の共有がままならないためだ。そのため仲間をこれまで作ることができず、ここまでソロで冒険活動をしていた。



「こんな状況で“やり直し”ばかりしてたら、いつか本当に心が折れちまうかもな…」



冒険者にとって、命を落とすことは日常茶飯事ではあるが、やはり死の瞬間というのは恐ろしいものである。彼は何度も死を経験してきたが、そのたびに味わう恐怖感は変わらなかった。自分の肉体が崩れ、視界が暗転していく瞬間、心の中で何が起きているのか分からなくなる。不安と絶望が彼を包み込み、もはや次に何が待っているのかを考える余裕すら奪われてしまう。



リクはそれを思い出すたびに、心の底から戦慄を覚えた。何度やり直そうとも、彼にとって死は常に身近にある脅威だった。しかし、その恐怖を乗り越えなければ、オーガを倒すという目標には近づけないことも理解していた。彼はその恐怖を抱えながらも、再び立ち上がる覚悟を決めた。自分の弱さを克服し、真の強さを手に入れるためには、この試練を乗り越えなければならないのだ。



「けど、このスキルで強くなるためには、まず根性が必要だ。少しずつでも前に進んでいくしかない」



リクは拳を握り、決意を新たにする。自分のステータスに表示された「スキル:やり直し」は、他人が理解しないだろうが、彼の最大の武器でもあり、最も辛い試練でもあった。



周囲の静けさの中、リクは自分の未来を思い描いた。死と隣り合わせの冒険者としての道。しかし、彼の目の前には希望がある。やり直しの力を手に入れた以上、何度でも挑戦し、成長することができる。彼は草原に座り、再び立ち上がる準備を整えた。



「次は、必ず勝つ…!」



その言葉が彼の心に響き、リクは新たな冒険へと踏み出す決意を固めた。

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