Ep.0-4
『王国の剣『黒い
『相手は『青薔薇姫』ではないかと言われている』
『ミトラフィアの剣盾、ついに和解か』
「等々…シオンではなくシルヴァン公爵家ばかり祝ってます。どの文もシオンが相手だと書かれてはいません。あくまでも匂わせな文ばかりです」
「なっ!!ルシャス兄様『青薔薇姫』って何!?」
「えっ?知らなかったの?シオンの通り名だよ」
「あら?本人には伝わってなかったのね。青い髪をした女騎士で、アンネローズ王女の護衛騎士だから『青薔薇姫』って呼ばれてるのよ」
「シオンさまにピッタリでしゅ!」
「まぁ、『マリオン』もそう思うわよね。フフッ素敵な名前よね」
「ひゃい!」
小さな甥には伝わっているのに、なぜ自分には伝わってないのだ!
通り名に気を取られていて話が逸れてしまった。
「コホンッ それで夫人?どうしてシオンの晴れ姿が見れるのだ?」
「新聞会社が立て続けに公爵家をお祝いしてるのと同時に公爵家は世間からの祝福を無視する事が出来ない状況になってます、
「なるほど、波に乗っからないとヤバいよってことね」
「同時に、シオンが狙われる可能性も高まったって事か?」
「高まったと言えば高まり、低くなったとも言えます。新聞ではシオン様かと匂わせる文しかないので、読む者は確信が持てないのです」
「なるほど…確信が持てないから暗殺者も下手に動けまいと」
「なるほどなぁ、流石新聞会社の社主だ。僅かの情報でそこまで推測出来るとは」
「お止めくださいエドガー様~わたくしはただの父の補佐ですわ」
そうは言ってるが満更でもなさそうなリリアだった。
実はリリアは国一の情報通と呼ばれる新聞会社の現社主(オーナー)。表向きは彼の父である伯爵となってるが実際は彼の補佐を務めてる彼女だ。
蜘蛛がクモの巣を広げていくように、彼女もあらゆる手で様々な情報を入手して広げていく…そんな彼女の会社の名前は【
彼女の発言により、今の状況がわかってきた。
どうやら、今の状況は公爵家にとても不利な状況…焦って変な事は出来ない、してこないだろう。
不安な気持ちもあるが、血の契約を結ばせた以上こちらも変な行動は出来ない。
シオンは食事を終え、家族に挨拶して玄関に向かった。泣きながらも見送りをしてくれるそうだ。
家族とハグを交わしキャシーが用意した馬車に乗って領地を離れた。
永遠の別れじゃない、これは両家の因縁を失くすための契約だ、また何時かは会えるのだ…
「…ホントにお嬢様は愛されてますね…何もかもシュリオンの反転って感じです」
「男だらけの侯爵家唯一の女児って事もあったから家族全員が可愛くて仕方がないのでしょうね」
「なるほど…男兄弟だらけだったからシュリオンは尚更酷い扱いを受けてたって事…現実を見れば見るほど小説が残酷な気がしてきます…」
「……」
「えっと…あの後、お嬢様に言われて役に立つようなモノがないかと記憶を探ってみたのですが…関係あるかわからないのですが…いくつか思い出せました。紙に書き写したので新居にてお渡ししますね」
「無理を言ったのにありがとう」
「いえ…あんなこと言ったのにこれしか出来ませんから…」
「…ねぇ、貴方の言う物語にもシュリオンに通り名とかあった?」
「シュリオンにですか?シュリオンは地道に力をつけていくスタイル…えっと雇われ傭兵からのスタートで後半に騎士になることは無かったのでシュリオンには通り名や二つ名に無かったですね」
「そうなの、シュリオンにはって事は他のキャラクターにはあったの?」
「はい…ライバルのクロヴィスには…お嬢様の夫になるクロヴィス様と似た通り名がついてましたね」
「『黒い剣刃』みたいなの?」
「はい、それよりも…かなりクセの強い通り名ですね(厨二病全開な恥ずいヤツだったなぁ…口に出したくないわ)」
「へぇ…あっ」ガタッ
「わっ!」
話に夢中になってる間にライフォードの領地に着いたみたいだ。
御者が着いたと報告し、扉を開けてくれた。
馬車を降りると…目の前には木々に囲まれた空間にポツンと建てられてる屋敷があった。此処がライフォードが用意してくれた新居だ。
時刻は昼前
離れた所に別の馬車が停まっていた。剣のような紋章が刻まれてる事から、シルヴァン公爵家の馬車だとわかった。
キャシーに荷物を頼み、御者に帰るよう伝えて屋敷に入った。
扉をノックすると聞き覚えのある声が聞こえ、許可をくれた。
中に入ると、見た目よりも広い空間が広がっていた。広い玄関でライフォードが出迎えてくれて。
「お待ちしてましたシオン様。遠い所からありがとうございます」
「礼を言うのは私の方です公爵様、こんな素敵な所を用意してくれてありがとうございます」
「喜んでもらえて光栄です。此処で話すよりも座って話しましょう、どうぞ」
「はい」
ライフォードに案内された部屋に入ると、そこには既にクロヴィスが居た。
こちらを見たがすぐに向き直った。この態度にキャシーは飛び掛かりそうになったが、動かぬよう指示した。
ライフォードはため息を吐いてソファーに座るよう言った。
「此処はワタシが治めてる土地だ。父の息がかかってない土地ではあるが、我々の因縁は国で有名な事…父関係なく貴女に何かしてくるかもしれない…」
「ご心配なく、自分の身は自分で守れます」
「そうですか、ですが無理はしないで下さい。ワタシも父にバレぬように動いて手伝いますので、何なりと連絡してください。必要なモノがありましたら用意します」
「そんなっ、流石にそこまでは…」
「義理の娘とはいえ、恩人のシオン様にワタシが何かしたいのです」
「…(隣の息子さんはそれが嫌みたいだけど)」
「(あぁ!何なのよ!お嬢様を睨むな!この*◇&■野郎!)」
「(落ち着きなさいキャシー、飛び掛かかっちゃ駄目)」
「(うぅっ!悔しい!!)」
公爵家唯一の善人の息子がこれでは大変だ…
その後、今後の事を話し終えるとライフォードは帰って行った。
屋敷に残ったのはシオンとクロヴィス、侍女のキャシーとクロヴィスの従者の4人だけ。
キャシーはクロヴィスの従者と睨みあっていた。
「クロヴィス様の妻になったからと言ってもお前の扱いは変わらないぞ。お前とソイツは敵だ。オレはお前らの世話はしない。食料も金銭も何もかも自分達で用意するんだ。
公爵様からの祝いのモノも使わせない。これはクロヴィス様だけが使う権利がある」
「ちょっと!失礼よ!何で偉そうに!」
「メイド風情が口答えするとは、侯爵家は落ちぶれたな」
「このっ!」
「キャシー」
「っ!!」
あまりにも無礼な男に怒りを感じたのはキャシーだけじゃない。
シオンも怒ってる、ここは自分が冷静に対応すべきだ。
「侮辱するのは私だけにしなさい。でも、今の発言で私が泣くと思ったら大間違いよ。私はただの貴族令嬢じゃないから」
「チッ!」
「そこまでにしろ、耳障りだ」
「っ!…申し訳ございません」
「(貴方が止めないから口論になってるんでしょ!)」
ホントに他人事のように思ってるクロヴィス、呆れて何も言えない…。
「お前の事などどうでも良い。ただし俺に絶対に関わるな、いいな?」
「破ったら命は無いと思え」
「(邪魔をするなって事ね…)わかりました」
「お嬢様…」
彼らはそれだけ言い残して部屋を出ていった。
残されたシオンとキャシーははぁと息を吐いて座り込んだ。
「はぁ…何なんですかアレ…」
「深く気にしなくても良いわよキャシー、最初からあの人達と接する時間なんて無いから」
「元から邪魔すら出来ないって事ですか」
「そうよ。取り敢えず、さっき公爵様が言ってた部屋に行きましょ」
「はい」
荷物を手にして2階に上がり、ライフォードが言っていた部屋に入った。
どうやらキャシーの部屋と繋がってる仕組みになってるようだ。
「これならあの人達に会わずにお嬢様に会えますね」
「それを踏まえて作ったのかもね」
「公爵様…聖人すぎます」
ライフォードに感謝しながらお互いの荷物を開けて明日の準備をした。
クロヴィスの従者はライフォードからの祝儀は使わせないと言っていたが、シオンの貯金はかなりの金額、滅多に使わないので結構ある。
騎士なのでドレスやアクセサリーは最低限のモノだけで良い、装備や武器のメンテナンスで金を使うのがほとんどだ。
こうして荷物の整理だけで1日を終えた。
明日から忙しくなるぞ…
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