第1章 一部
Ep.1-1 薔薇の剣《エスペランス》
時は少し遡って騎士学校時代
シオンは首席で入学した。
この時から女子生徒は結構いた。だから女性騎士への差別はほとんど無かった。
平民でも入学試験で良い成績を出せば入学は認められる、平民の特待生もいた。
その中で、このミトラフィア王国の剣と盾と呼ばれるシルヴァン公爵家とカーリー侯爵家の入学はかなり話題になった。
シオンが首席で、クロヴィスが次席での入学…これだけでも大事だった。
シオンはとても美しい少女だった。美しい青い髪、宝石のような青い瞳…その場に居るだけで人々の目を奪った。
厄介だったのは、既に学園内で派閥が出来ていた事。
因縁関係なくシオンと接する者達、因縁やクロヴィスと繋がってる者達…学生とは思えないほど過激な争いだった。
幸いにも、この時から既に女子生徒が男子生徒に模擬戦で勝利するなど当たり前だった。おかしい、あり得ない等と罵倒、侮辱する者が居なかったのはせめてもの救いだろう。
また男同士の決闘もあれば女同士の決闘、更には男子生徒が女子生徒に決闘を申し込む、また逆もあった。
当然シオンも申し込まれた。彼女が申し込む事は無かったが、申し込んで来た相手のほとんどがクロヴィス側の男子生徒達だった。
結果としては全勝、怪我をして不調な時でも、体調が悪くても関係なかった。相手にハンデがあっても余裕で勝ってみせた。
…それだけならまだ良かった…
…入学当時の結果が気に食わなかったクロヴィスはシオンを侮辱するような発言をして絡んできた。
卑怯な手を使ったのだろ、首席だからと調子に乗るな、化けの皮を剥いで退学させてやるなど…敵意剥き出しな状態で絡んできた。
たまたまテストの結果が悪く上位にいなかった時、1位だったクロヴィスに馬鹿にされたりしたが…シオンは気にしなかった。
ライバル視してくる
それすらも許せなかったクロヴィスは…シオンが何かをするだけで絡んできて、嫌がらせをしてきた。
彼女が何かをする事すら気にくわないのだろう…
そんな生活を送ること2年、生徒が騎士からスカウトされる時期、シオンはある人物に声をかけられた。
その相手が今の主である『アンネローズ・リ・ミトラフィア』、この国の第一王女だ。
当時16のシオンはただ卒業を待つだけだった。18歳のアンネローズがたまたま学園を訪れた際、シオンの模擬戦を目にし…心を奪われたらしく彼女に声をかけ自ら護衛に任命すると言ったのだ。
王国の薔薇に声をかけられ、在学中に職を手に入れたシオン。これには流石のクロヴィスも何も言えなかったそうだ…王女の護衛を侮辱するのは主であるアンネローズを侮辱してるのと同じ、流石に王家に楯突く事は出来ないそうだ…。
そんなクロヴィスだったが、彼もある部隊にスカウトされていた。
強者だけが入団出来る部隊のようで…彼のスカウトもかなり話題になった。
その後クロヴィスが首席、シオンが次席で卒業した。
最後まで馬鹿にしてきたが、無視して立ち去った…最後まで相手にされなかったクロヴィスだった。
騎士学校を卒業した後、すぐに叙任式が行われた。王女自ら叙任の儀式を行い、王女に忠誠を誓い護衛騎士となった。
あまりにも若すぎる16歳の女騎士の誕生…馬鹿にしたり見下す者もいた。
しかし苦戦しながらも彼女は様々な結果を残し国に名を残した。
今では彼女を馬鹿にするものも見下す者も居ない。
現在18歳の彼女は…結婚した。
ちょっと前まで独り身の女騎士で侯爵令嬢だったのだが…狙ってる者も多かったはずだ。
しかし…クロヴィスとシオンは結婚式を行っていない、更には夫婦を示す結婚指輪をお互い着けてない。
クロヴィスの結婚が広まっていく中、シオンは独身を偽る訳事も…彼の妻だと主張する事も出来ない…非常に面倒な状況だ。
アンネローズには既に報告はされてるだろう、そこは心配ないが…お洒落やお喋りが好きな仕事仲間が口を滑らせないか心配だ。
不安な気持ちもあるが、仕事に集中しよう…
シオンは騎士の制服を纏い、キャシーに行ってくると行って屋敷を出た。既にクロヴィス達は居なかったので…スキャンダルは大丈夫だろう。一緒に出たら大変だ…
キャシーは
キャシーが呼んでくれた馬車に乗り、王宮の離れに向かった。
王宮の離れにある城が全王国騎士の本部だ。
広い敷地内には幾つもの訓練所があり、各部隊専用の訓練所もある。
しばらくすると馬車は到着し、御者に時間を伝えて城に入った。
☆★☆★
ヒソヒソ…ざわざわ…
「(はぁ…わかってたけど、これは大変ね…)」
通りすぎる騎士、使用人達がシオンを見てヒソヒソ話したりジッと見たりした。
それもそのはず、皆が王国の剣の結婚相手が気になるのだ。その有力候補がシオンなのだ…候補も何も本人だ。
告白する事は出来ない、しかし独身を偽る事も出来ない…極めて難しい状況…
「(はぁ…とにかく仕事はちゃんとやらなきゃ。何時も通りの私でやれば怪しまれないわ)おはようございます」
「おはよう、カーリー」
「おはようございますっ!」
「おはよー」
「おはようシオン、良い休暇を取れた?」
「はい、ご迷惑をおかけしました」
「迷惑じゃないぞ、お前は働き過ぎだ。遠征後の休みに限らず定期的に休むべきだ」
「そうそう」
部屋に入ると出迎えてくれたのは…主と仕事仲間達だった。
赤茶色の短髪のガタイの良い男、ブロンドの髪を束ねた背の低い少女、銀髪に紫色の瞳をした青年、そして薔薇色の長い髪に青い瞳を…高貴な紅い服を着た美しい女性…
紅い服を着た美しい彼女こそ、シオンの主でこの国の第一王女『アンネローズ・リ・ミトラフィア』だ。
ガタイの良い男『ダニエル』が隊長、小柄な少女『ティナ』が後衛兼前衛補助、そして銀髪の青年『セルジュ』が副隊長、ちなみにあと一人いる。
そしてシオンは前衛担当…いわゆる戦闘担当だ。戦う事だけに専念すれば良いと言われてる。
ティナはシオンの友人で相棒でもある、ティナと話し合い何処から攻めるかどう動くかを考える。
ティナの指示はとても素晴らしく、的確な判断力で護衛騎士の力を100%引き出しアンネローズを無傷で守りきる…護衛隊の軍師だ。ちなみに戦うのは苦手だ。
セルジュは副隊長でありながら護衛隊の治療師、彼の回復魔法やポーションは欠損した部分も癒して元通りにさせてしまう…後衛型だ。
そして隊長のダニエル、見た目の通り隊長に相応しい肉体、戦闘力も防御力もシオンよりも高い。また、失言になるが見た目からは想像できないが、魔法術にも優れており
そして、王国の剣として有名なシルヴァン公爵家に次ぐ『王国の戦士』と呼ばれる一族の生まれだ。
全員アンネローズが声をかけた者達…彼女の目に狂いはなかった。素晴らしい目利きだ…
だから、彼女は護衛隊を【
王国の薔薇アンネローズ王女の為に戦う騎士達にピッタリな名前だ…
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