第七話 決戦前の告白
7.1
フリッカはノエルの命が危険にさらされていると知り、駆けつけた。そして危険を回避できたのはいいものの、リレイオがフリッカと二人きりで話したいと言ってきた。
ルヴィンナと一緒に討伐隊の庁舎を出て行ったリレイオを睨みつけたまま、これからのことを考える。
(どうする!? 絶対に罠だ。でも行かないと、ノエルさんだけでなくエドラや、他の人も危険にさらされる)
リレイオが仕掛けた器は一本だけなのかと、まずは作られたばかりの回復薬を一本一本確認した。そして薄赤いもの、もしくは明滅をしているかのようなものはないとわかる。凍らせた箱も解凍した。
(……良かった。あの一本だけだった)
もしかしたら、偶然だったのかもしれない。しかしリレイオに操られて、ノエルが取ってしまっていたのかもしれない。もし後者だとしたら、リレイオに回復薬を作らせることは危うい。
「ねぇ、フリッカ。説明してってば。どうしてあの一本が危ないってわかったの?」
エドラから質問を受ける。それはこの場にいる誰もが知りたがっているようで、全員フリッカを見ていた。
「それは」
説明をしようとして、思い留まる。ノエルに何らかの精神魔法をしているリレイオだ。回復薬を作っていた時間に、もしかしたらこの場にいた全員にも何か仕掛けているかもしれない。
(……どっち!? エドラたちは、安全?)
もし何かされているとしたら、フリッカが四属性を使って無効化すればいい。しかし確証がなく、どんな内容の精神魔法をかけられたのかがわからない。考えられるだけの効果をつけて無効化魔法を作ればいいが、フリッカが思いつかないような内容を仕掛けているかもしれない。
考え始めたらきりがなく、また、なぜ危ないとわかったのかと説明も難しい。
(どういうことだったのかって説明したら、それを作り出されることはない? ムールビーを作り出すぐらいだ。操作して爆発物を作らせるかもしれない)
フリッカが危険だと知らせることで、それがリレイオに伝わり精神操作している相手を自害させるかもしれない。だから、フリッカは何も言えなかった。
「……ごめん。今は、なにも言えない」
「そうなの? なんで?」
「なんでも。エドラたちのためだから」
「それは、僕にも言えないのかな」
「は、はい。ノエルさんにも、言えません」
ノエルが寂しそうな顔をする。思わず白状してしまいそうになったが、ノエルを危険にさらすことはできない。
失礼しますと断りを入れ、フリッカは討伐隊の庁舎を出た。
(誰も、死なせないんだから)
リレイオの企みを暴いてやる。そう思うのだが、そもそも目的がわからない。わからないから何もできないじゃ、何も救えない。
フリッカは、追跡魔法でリレイオとルヴィンナを追った。
リレイオとルヴィンナは、庁舎を出てから広場の方へ向かったようだ。しかし広場は人が多く、追跡魔法だけを追いかけることはできない。まだルヴィンナと一緒にいるのなら、人々の関心がルヴィンナに向いている場所を捜そうと決めた。
そうして辿り、ノエルが連れて行ってくれる予定だった店の前で二人を発見する。そこはスイーツ店のようで、店頭の席でルヴィンナが何か食べていた。二人の会話の内容を確認したいが、隠れる場所がない。フリッカは今、広場を挟んだ木の裏にいる。
(そうだ。二人の話を聞くってことを限定した精霊魔法を使えば……)
四属性の力を両手に練り上げ、盗聴魔法を作り出す。
「
リレイオとルヴィンナが座っている場所目がけて、盗聴魔法を仕掛けた。四属性の精霊魔法だとわかる白い光線が、真っ直ぐに二人へ向かう。しかし、もう少しというところで突然霧散した。
「なんで!? もう一度。盗聴再生!」
再び盗聴魔法を仕掛ける。しかしまた、霧散してしまった。間髪入れずに放ったからか、霧散して白い粒子になった盗聴魔法が、リレイオに取り込まれたように見えた。
「どういうこと? なにか、周囲に展開しているの??」
よく目を凝らすと、リレイオの周囲にうっすらと靄が見えたような気がした。リレイオを見ると何度か、靄がかかっているような状態がある。もしかしたら、そのときに何かしているのかもしれない。
(離れたところから仕掛けても防がれちゃうんじゃ、話の内容が聞けないじゃん)
ルヴィンナと何を話しているのか。それがわかれば、今後の対策も立てやすかった。しかしそれは聞けなかったため、フリッカはこの場での情報収集を諦める。
(これからどうしよう。今のままノエルさんの家でお世話になるわけにはいかないよね)
リレイオから、夜に話そうと言われている。そのとき、荷物を一緒に持っていこうと決めた。
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