第6話 分岐点

会議の次の日。


 他の村へ行く人、もとい私以外の村の人たちが、イニジオから出発しようとしているところだ。


 村長がデリットさん達にお礼を言っている。






「私たちを救っていただいただけでなく、泊めていただいたうえに、出発に必要なものまでそろえてくださり、本当にありがとうございます」




 


 そう、みんなが村まで行くのに必要な分の食料や道具、安全な道を示した地図などをデリットさん達がそろえてくれたのだ。






「みなさん、また何かあったら私たちを頼ってください。いつでも私たちは皆さんの味方です」






 デリットさんの最後の言葉で、出発式は終わり、みんながそれぞれ自分たちの目的地へ歩みだしていった。






「リアンちゃん、また会おうね」


「リアンちゃん、頑張るんだよ」


「リアンちゃん、ベッドから落ちてみんなを起こしちゃだめだよ」


「リアン、元気に生活するんだぞ」


「リアン、体を大切にね」






 村の人やお父さん、お母さんから励ましの言葉を言われる。


 途中黒歴史も公開された気がするけど……


 お父さんとお母さんも、村に向かって出発した。


 お父さんとお母さんが見えなくなるまで、手を振り続けた。


 どこの村に行ったのかはわかるから、またみんなに会いにも行きたいな。


 みんなを見送った後、デリットさんを探す。


 どこにいるんだろう? あ、そうだ。アーブデューペさんが言ってたな。






「デリットを見失ったら、少し高いところに行けばすぐ見つかりますよ。建物の中にいたら、難しいですが。屋外なら高いところから見るのが一番です」






 早速お城を上る。屋上だと高すぎるだろうから、二階から見てみる。






「う~ん、どこだろう」






こっちの方角にはいないのかなぁ。反対側を見てみよう。反対側に回り窓から外を覗いてみる。






「あ、いた」






 大人数の行き交う道を、圧倒的なオーラで歩く鎧、もといデリットさんが見えた。


 大きな袋を何個も持っている。


 そういえば、見つけてもここからどうやってデリットさんに会いたいことを伝えればいいの? はぁ、降りるしかないか。


 デリットさんの向かう先をよく見てから城を下りる。


 さっきデリットさんがいた道には、もう彼の姿はない。


 この先に行ったのか。走って追いかける。


 少し走ると、大きな袋を持ったデリットさんの姿が見えた。






「デリットさ~ん」






呼びかけるとデリットさんはゆっくりとこちらを向いた。






「あ、リアンちゃんか、どうしたんだい」


「これからどうしたらいいか聞いておこうかなと、何を手伝えばいいか全くわからなくて」




「う~ん、今人手が不足しているのは、掃除をしてくれる人だね。でも掃除は危険だからね。かんびょ……いやなんでもない」






デリットさんはしばらく考えた後






「あっ!そうだ、君、宝石に興味ある?」






 宝石を使うアクセサリーを作っている以上、興味のないはずがない。






「はい!あります」


「じゃあ、今日の夕方に城の屋上に来て」






という。






 屋上に宝石なんてあったかなぁ?でも宝石関連の仕事なのかな。






「わかりました。あ、そういえばデリットさん。その大きな袋は何ですか?」


「あ~えっとねぇ」






デリットさんが少し困った様子に変わる。






「生活用品だよ。あ、急がなきゃ。じゃあね、また夕方に~」




 そういうとデリットさんは走り去ってしまった。


 ぜ~ったいに何かあるなぁ。


 でも知られたくないことなら、あんまり深く探っちゃだめだよね。




 五時までなにしよう?この間読んだ本を読もうかな。


 部屋に戻ろうと足を動かそうとした瞬間、あることを思い出す。


 宝石屋さんのお姉さんに明後日くらいに来てって言われてるんだった。


 あの日から今日がちょうど三日目だ。


 危ない危ない、忘れるところだった。

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