第17話 フランクフルトの男

 M高速道路Tサービスエリアに立ち寄った時のことだ。

 旨いと評判のフランクフルトを買い、暖めなおすために電子レンジのところへ行った。そこには男がにこやかに立っており、「暖めですね! どうぞこちらへ」と、透明なビニール手袋を装着した手を差し出してきた。自然な流れで、私は男にパックを渡し、男はパックをレンジに入れた。それから男は流暢にフランクフルトの説明をして、最後に「頬張るのに邪魔になりますから串を抜いときますね」と言った。

 「え?」

 聞き返す間もなく、レンジがチンと鳴った。男はパックを持ったまま、フランクフルトと串との境目を左手の指で摘み、右手で串の先端を持つと、串をスッと引き抜いた。そのとき男は腰を震わせ、「アッフ」と吐息を漏らしていた。

「どうぞ。運転お気をつけて!」

 私は、串を引き抜かれたフランクフルトが入ったパックを持ち、何かとてつもない辱めを受けたような気分で車に戻った。

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