第7話 同好の男

 いつものようにショッピングセンターの広い駐車場を歩いていると、見慣れた姿の、見慣れない男と出くわした。

 サファリ帽にメガネ。両手をトレンチコートのポケットに。黒靴下から脛をチラ見せし、黒い革靴。私と瓜二つのスタイルだ。我々は照れながら握手をして、ショッピングセンター内のカフェに入った。

「見かけない顔だね」

「はい。始めたばかりなので」

 彼と打ち解けられると思っていた。だが、彼が座るとき、一瞬はだけたコートから剃毛された脛が顕わになったのを見て、「大同小異?」という言葉が頭をよぎった。

 彼は、鍛え上げた筋肉を誇示するのが目的で、ビキニパンツを着用し、掛け声は「どう?」だという。

 私は、ただ若い女性が驚く顔が見られればいい。もちろんブリーフなぞ履いておらず、掛け声は「な?」だった。

 そんな彼の持ち物は、みんな、私のよりも上質だ。

 それ以降、私には「敵愾心」しかなくなっていた。

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